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巨人軍が着用する「走塁用ミット」は本当に効果があるのか? きっかけは坂本勇人を襲った“悪夢”

posted2021/11/07 17:00

 
巨人軍が着用する「走塁用ミット」は本当に効果があるのか? きっかけは坂本勇人を襲った“悪夢”<Number Web> photograph by KYODO

坂本勇人の骨折以降、目にする機会も増えた走塁用ミット(1万2000円)。

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熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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『Sports Graphic Number』で好評連載中の「スポーツまるごとHOWマッチ」を特別に公開します! <初出:1032号(2021年7月29日発売)、肩書きなど全て当時>

 次々と新型ギアが登場する野球界。今季は、巨人が5月11日から導入したギアが話題になった。出塁した選手が黒い“鍋つかみ”に似たものを手にはめて、走塁に臨んだからだ。

 この鍋つかみに似たもの、正式名称は“スライディング・ミット”(以下ミット)といい、走塁中のケガを防ぐために開発された。

 野球では走塁中の手指や手首のケガが意外と多く、盗塁、牽制での帰塁の際の突き指や打撲、骨折が少なくない。巨人では5月9日、捕手からの牽制に手から一塁に帰った坂本勇人が、右手親指を骨折。1カ月以上の欠場を余儀なくされた。こうした悪夢を繰り返さないために、いち早く導入を決めたわけだ。

 復帰後の坂本をはじめ、巨人の選手が使用する商品は、アメリカの老舗サポーターメーカー「PRO」社の「プロ772」(税抜き1万2000円)。このギアには、ケガを防ぐためのさまざまな素材が用いられている。

 手指を覆うのは靴のソールにも使われる、柔軟性と弾力性に優れた衝撃吸収材EVA。表面に用いられるナイロン製の厚手ループ織は耐久性があり、スライディングでの摩擦、摩耗に非常に強い。そして手のひらと甲には、軽量のアルミニウム製ステーを装備。実際に手にはめると、保護されているという確かな実感があり、手触りもなかなか心地いい。

最初は「ほとんど興味を持たれなかったですね」

 ケガ防止の意識が高いアメリカでは、2000年代から走塁中の手の保護が重視されるようになり、'10年代半ばに現在の形のミットが出てきた。プロ772を日本で取り扱う「ムトーエンタープライズ」取締役の清遠興一さんが苦笑交じりに語る。

「'15年あたりにPRO社がミットを出しましたが、大きなものでした。プロ野球各球団に紹介してまわりましたが、ほとんど興味を持たれなかったですね」

 清遠さんによると、当時の“大きな鍋つかみ”はМLBで物議を醸したこともあるらしい。きわどいタッチプレーの際、ミットはベースについていたが、守備側が「中の指は届いていない!」と主張したのだ。こうしたこともあり、PRO社は改良に改良を重ね、ミットはずいぶん使い勝手のいいものに進化した。

 楽天時代のウィーラーなど、一部の選手だけが使っていた知る人ぞ知るギア、スライディング・ミット。それは坂本のケガを契機に、多くの日本人選手が知るところとなった。これでケガが減るのなら、坂本の故障も決して無駄ではなかったといえるかもしれない。

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