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「完璧とはいかなくとも…」宇野昌磨がスケートアメリカで挑んだ“4回転5本”「23歳でも決して若くない」からこその“覚悟の演技”だった
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2021/10/25 17:02
日本時間10月24日に行われたGPシリーズ初戦スケートアメリカにて、FPの演技を行う宇野昌磨
“未来を信じる”宇野の内面が表れた言葉とは?
だが、「23、24歳というのは決して若い歳ではない」と言う宇野は、スケートアメリカ開幕直前、その年齢で引退する選手が少なくないことを前提にしながら、こう語った。
「年齢の限界というのはどれほど高い壁で、どこから体力が落ちていくのか僕には分からないですけれども、一般的なスポーツで考えれば23歳、24歳は若い方だと思います。そんなに関係ないかな、と。フィギュアスケートは技術の向上が激しいので、歳を重ねるにつれ、急な変化に追いつくことは難しいかもしれません。でも、はじめから技術が高いところにあれば、どれだけ歳をとっても維持できるんじゃないかなって。今まで経験してきたことのアドバンテージがあると思いますし、若いときは勢いというアドバンテージがあると思いますし、それぞれのよさがあると思います」
年齢なり何なり、ある事実をどう捉えるかはその人の姿勢による。フィギュアスケートが他競技より早く引退の時期が訪れる傾向があるのは事実としても、そこにどう向き合うかはそれぞれだ。23、24歳は若くはないとしつつ、でもそれを悲観的に見ない。それは「挑む」という言葉に表れているように、より高みを目指す決意が核にあり、そしてそこに至ることができる未来を信じている宇野の内面を示している。
「(優勝した)ヴィンセント選手が練習している姿を見て、日頃からどれだけフリープログラムを練習しているんだ、というくらいの安定がにじみ出ていました。もっと練習できるんじゃないかと思いました」
試合後に宇野は言った。新たな刺激を得て力にかえようとするのもまた、宇野の心のありようを示す。
「失敗したもの、足りなかったものを日本に持ち帰って練習を積み重ねていきたいです」
可能性を信じ、先を見据える宇野は、次戦、グランプリシリーズ第4戦のNHK杯へと進む。