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スケートアメリカ3位、世界王者ネイサン・チェンに何が起きたのか? 4ループ挑戦が意味するもの「できるのは、先に進むことだけ」
posted2021/10/26 11:01
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Getty Images
10月22日から、ネバダ州ラスベガスで開催されていたスケートアメリカ。男子の決勝は、心なしか会場中が緊張感に満ちていた。この大会5連覇を目指していた世界王者ネイサン・チェンが、SPではジャンプミスを重ねて4位という予想外の位置に立っていたのである。
「何が起きたのか、まだ消化できていない」
「言い訳はしたくありません」
「ぼくも人間。ミスをすることもあります」
「五輪シーズンの影響は、もちろんあります」
SPの演技後、チェンはミックスゾーンに来て、普段にも増しての早口で言葉少なにそう語った。マスクで顔の半分は隠れているが、かつて見たことがないほど動揺していることは、見て取れた。
2018年平昌オリンピックでSP17位、フリー1位、総合5位に終わった後、チェンは過去3シーズン個人戦で連勝を続けてきた。
2021年3月のストックホルム世界選手権では珍しくSPで4ルッツを転倒して3位スタートになった。だがその後、フリーでは5度の4回転を成功させて逆転優勝を果たしている。
ここでも過去3シーズン見せてきた超人ぶりを発揮して、フリーで挽回するのだろうか。会場にいた誰もが、そう思っていたに違いない。