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「完璧とはいかなくとも…」宇野昌磨がスケートアメリカで挑んだ“4回転5本”「23歳でも決して若くない」からこその“覚悟の演技”だった
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2021/10/25 17:02
日本時間10月24日に行われたGPシリーズ初戦スケートアメリカにて、FPの演技を行う宇野昌磨
言葉の通り、フリーでは4回転ジャンプ4種類、計5本を組み入れる構成をとる。2016-2017シーズンの世界選手権で成功させたのち、近年は取り組むのをやめていた4回転ループもその中に含まれる。
もう一度取り戻そうと考えたのは昨シーズン終盤の出来事にあった。
「鍵山優真選手と一緒に練習をするようになったとき、彼が(4回転)ルッツとループを降りているのを見ました。4回転3種類だと時代が流れるにつれて置いていかれるのではないかと思いました。優真が僕を尊敬していると言ってくれているからこそ、期待にこたえる選手でいたいと思い、練習を始めました」
開幕前に語った「決して若い歳ではない」の真意
より若い世代の台頭に刺激を受けたのをきっかけにチャレンジを再開した宇野は、グランプリシリーズ開幕に寄せたコメントでは、「挑む!」をテーマにすること、およびその意図を説明している。
「フィギュアスケーターだと23歳、24歳というのは決して若い歳ではないですが、それでも僕は挑む、挑戦する立場でいたいと思っています」
フィギュアスケートは、宇野の言葉にある通り、他の競技と比べれば競技人生は短い方に入る。資金面など競技環境の事情もかかわってくるが、それとともに身体的な負担の大きさがある。特にシングルの場合、ジャンプの衝撃は大きい。だから足の靭帯であったり、関節であったり、さまざまな怪我を引き起こす。しかも、ジャンプの難度はより高くなるばかりだ。
また、ほとんどのスケーターは幼少期にスタートを切るから長年の負担の蓄積もある。だから、現役選手の中には、痛みを抱えていても、あるいは多少の怪我を負ってもそれと向き合いつつ練習に励むスケーターは少なくない。そうした背景があるなかで、氷上の演技は体現される。スポーツ全般から見れば若くして競技から退く選手が多い理由でもある。