濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
神取&アジャ&“W井上”! レジェンドたちが若手精鋭軍との「3本勝負」で必殺技連発…“お祭り”カードに見た歴史的意義とは?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/10/21 17:00
10月10日に行われたディアナ10周年記念大会にて、左から井上京子、井上貴子、ブル中野、神取忍、アジャコング。
女子プロレスの歴史をつなげる「3本勝負」
「何をしても全然倒れない先輩方が強すぎて」
試合後にそう語ったのは梅咲。進垣もその言葉に頷いた。
「自分たちの技を精一杯受けてから返してくる懐の深さを感じました」
その「返す」技がそれぞれの代名詞、数十年かけて磨きに磨いたものばかりだ。アジャはチョップからポーズを決め、神取はワキ固めに頭突き、スイングスリーパー。貴子はコーナートップから後頭部へのニードロップ。京子はラリアットで相手2人をまとめてなぎ倒し、ナイアガラ・ドライバーで決勝のフォールを奪った。
決勝のフォールというのは、3本目のフォールである。この試合は、今では珍しい3本勝負で行なわれた。1本目は京子が梅咲から3カウント、2本目は梅咲が京子から取り返し、そして最後も京子が決めた。
3本勝負は、全日本女子プロレスでよく行なわれていた試合形式。それを復活させるのも京子のアイディアだった。単純に3試合分というわけではないが、それでも試合は長くなるからベテランたちにとってはキツい。ただアジャによると「昔は3本勝負が当たり前だったからね。慣れてる分こっちが有利だった」。確かに“若手チーム”は全員、3本勝負初体験だったそうだ。
試合後のリングで、京子はこれからもディアナ、女子プロレスを応援してほしいとアピールした。だからこそ、対戦相手に若い選手たちを抜擢したのだろう。この試合には、レジェンドが顔を揃える“お祭り”というだけでなく女子プロレスの歴史をつなげるという意味もあった。
「80、90になっても元気でリングに上がりたい」
インタビュースペースでのアジャは11月に引退する進垣や、前日に対戦した渡辺未詩(東京女子プロレス)についても言及していた。「自分たちが若い頃は」、「それに比べて今の子たちは」といったことをまったく言わない。
キャリアにあぐらをかくことがないし、後輩たちのことも考える。それはつまり“現役”だからだ。
「若くて元気なのは当たり前なんですよ。でも歳とって元気なのには敵わないんだよこのヤローと若いやつらには言いたい」
そう言ったアジャがヒザの手術を選択したのも、現役を続けるためだ。
あと5年、10年と現役を続けるということですね。記者にそう言われると「え、5年10年しか続けちゃダメなの?」と返した。
「生涯現役だからいま手術するんですよ。80、90になっても元気でリングに上がりたいから。自分たちはプロレスを30年、35年やって、今から“引退します”って言っても、まだやってたのって言われちゃいますよ。みんなずーっとやってりゃいいんです。もう人生の半分以上プロレスやってるんだから」