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神取&アジャ&“W井上”! レジェンドたちが若手精鋭軍との「3本勝負」で必殺技連発…“お祭り”カードに見た歴史的意義とは?
posted2021/10/21 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Takuya Sugiyama
選手寿命が長いプロレスの世界だが“4人合わせてキャリア136年”のチームは相当にレアだ。10月10日に開催された、ワールド女子プロレス・ディアナの10周年記念大会。そのメインイベントとして組まれた8人タッグマッチである。
井上京子:1988年デビュー(52歳)
井上貴子:1988年デビュー(51歳)
アジャコング:1986年デビュー(51歳)
神取忍:1986年デビュー(56歳)
その足跡については、あらためて紹介するまでもないだろう。全員が女子プロレスの歴史に残る選手たちだ。
ディアナは京子が代表を務め、シングル王座も保持している。この10周年大会ではタイトル防衛戦をプランしていたが「コロナでみんなが沈んでる時だからお祭り的なカードを」と思い立ったそうだ。
「見ているだけでありがたい」レジェンド達の闘い
現在、神取と貴子が所属するLLPW-Xはコロナ禍で興行を開催していない。アジャは大会2日後にヒザの手術をすることが決まっており、これが欠場前最後の試合だった。そんな時期でもレジェンドが揃い、しかもセコンドには“女帝”ブル中野が控えているのだから圧巻であり壮観でもあり。唯一、現役ではない「ブル様」の手には〈ALL OVER 50才 昔は若かった‼︎〉と書かれたフラッグ。いやいや若くなくたって、というよりキャリアと年齢を重ねたこのメンバーだからこそ、見ているだけでありがたい。思わず手を合わせた、心の中で。
しかもこの方々(と言いたくなるではないか)が凄いのは、キャリアや“顔”で試合をしないことだ。対戦したのは、京子が「今ノリにノッている」という新鋭4人(梅咲遥、進垣リナ、笹村あやめ、三浦亜美)。彼女たちのドロップキックやエルボーを、レジェンドたちが正面から受ける。
90年代、“W井上”やアジャ、ブルが所属した全日本女子プロレスと神取たち他団体の選手が大げさでなく命を削り合った対抗戦時代と、プロレスに向き合う姿勢は変わらない。とことん、楽ができない体質と言えばいいだろうか。
全盛期とまったく同じ動きというわけにはいかない。神取が若い選手の攻撃に「痛え!」と顔をしかめた場面には驚いた。隙のない強さで若者を圧倒するのではなく、むしろ若さに翻弄されながら頑張る姿が印象的だった。ただもちろん、やられたらそれ以上にやり返す。