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紀平梨花が怪我でグランプリファイナル絶望的…五輪出場のために“必要なこと”とは? 語っていた“ぶっつけ本番”への葛藤と本音
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAasami Enomoto
posted2021/10/20 17:03
今年3月に開催された世界選手権SPで演技を行う紀平梨花
7月、アイスショーの「ドリーム・オン・アイス」に出演したが、その際、腰痛が完治していないことについて、「(世界国別対抗の後)1回(練習を)休んだり、軽めの練習をしたり、少しずつよくなりました」と状態を説明している。そのため、月単位でジャンプの練習もしなかったことも語っている。
そればかりではない。2019年の秋に左足首を怪我した。その影響から、痛みの出るトリプルルッツの回避をしばしば余儀なくされた。本来は綺麗に跳べるはずなのに、歯がゆさもあった。試合で組み入れられないときがあるのもさることながら、練習への真摯な取り組みから考えれば、常に気にしながら練習しなければいけないことももどかしかっただろう。
足首の怪我は容易ならざる事態だが…
その中でより高いところを目指し、励んできた。万全ではない状態にあっても、トリプルアクセルをフリーで2度入れることを考え、4回転サルコウにもチャレンジしてきた。昨年末の全日本選手権で国際スケート連盟非公認ながら成功させ、その努力は実を結んだ。
何よりも、国内外の大会に出場し続け、活躍してきた事実がある。万全ではない状況が少なくない中でのことだ。それは体調面をはじめ自身と向き合い、やれることを捉え、取り組んできたからにほかならない。
昨シーズン後半の腰痛が完治に至らず、練習などへの影響が長引いたことに加え、スケートカナダ欠場を伝える際に発表した足首の怪我という状況は、もちろん、容易ならざる事態だ。それでも今日まで怪我とともに過ごしてきた時間は、そこにいきてくる。
また、グランプリファイナルと全日本選手権までの期間にあまりゆとりがないことを考えれば、ファイナルに進出することが難しくなったこともポジティブに捉えることができる。北京五輪の代表は、全日本選手権の成績でつかめるからだ。