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紀平梨花が怪我でグランプリファイナル絶望的…五輪出場のために“必要なこと”とは? 語っていた“ぶっつけ本番”への葛藤と本音
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAasami Enomoto
posted2021/10/20 17:03
今年3月に開催された世界選手権SPで演技を行う紀平梨花
試合に出られない時間を無駄にしない、紀平の「芯の強さ」
実戦経験が少ない中で照準を合わせる経験はすでに持っている。コロナにあって異例のシーズンとなった昨年度は、スイスで長期的に練習を積みながら日々を過ごし、初戦となったのは昨年12月の全日本選手権であった。多くの選手はなにがしかの実戦を積んでいた中、紀平は優勝を果たし、世界選手権代表に選ばれている。
試合が極めて限られた状況に対し、葛藤も抱えていたことは世界選手権を終えたときに明かしている。
「練習したことの成果を出す場がなかったので、なかなか達成感を得ることもなかったと思います」
「コロナに感染したくないということもありましたし、いろいろなストレスがたまっていました」
それでも、全日本選手権ではブランクを思わせない演技を披露し、先に触れたように4回転サルコウを成功させた。スイスでは日々の氷上練習に加え、週4回トレーニングに取り組むなど体力面を強化したという。その成果を見せ、試合に出られない時間を無駄にしなかったことも示した。そこにも紀平の芯の強さがある。
だから今、大切なのは試合に出ることよりも、本人の言葉の通り治療とリハビリに専念し治すこと。そこにオリンピックイヤーはかかっている。
試練にどう向かい、氷上に再び立つのか――目指してきた大舞台への歩みが止まることはない。
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