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《現地最新》MLBは“満員”で「日本で言う高校野球」観戦もマスクなしの大歓声…米国スポーツ界のリアルな現状とは?
posted2021/10/17 11:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
Getty Images
10月8日の金曜日、テキサス州ヒューストンでア・リーグ地区シリーズのアストロズ対ホワイトソックス戦を取材した後のホテルへの帰り道、レンタカーで高速道路を飛ばしていると、眩いばかりの照明が目に飛び込んできた。それはスポーツ施設独特の照明灯が発したもので、ふと気になって寄り道してしまった。
入場料を5ドル払って入った小さなスタジアムで行われていたのは、地元の高校のアメリカン・フットボールの公式戦だった。毎週、「金曜日の夜」に行われる高校フットボール。いわゆる「Friday Night Lights」。米国の高校の花形スポーツに関わる人々の日常を描いた同名の名著(ドラマにもなった)がベストセラーになったように、それは日本の高校野球のような距離感で米国人の身近に存在する。
そんな浮ついた気持ちが一気に冷めたのは、観客席でマスクを着用している人がほとんど皆無だったからだ。当然、ソーシャル・ディスタンスなどあるはずもなく、5割程度入った観客はお互いに近い距離で、地元の高校生のプレーを、大声を出しながら応援していた。
さっきまで取材していたアストロズの本拠地も同じだった。観客席でマスクなどしている人などほぼ皆無で、日本のプロ野球のように大声の応援を禁止されているわけではないので、観客が場内放送に煽られて「我らがアストロズ」を大声で応援していた。
そういう風景が今、米国のスポーツ界の日常になっている。
クラブ活動などのアマチュアスポーツも再開
去年、日本で高校野球をはじめとするアマチュアスポーツの大会が中止になったように、新型コロナウイルスのパンデミックは、米国の高校スポーツ界にも大きく影響した。去年は全米の高校のほとんどがフットボールや野球、サッカーといった野外スポーツはもちろん、バスケットボールやレスリング、体操競技といった室内競技の公式戦を中止にした。それが今年、何の制限もなしに行われている。
アマチュアの場合はまず何よりも、教育機関で働く人々が勤務地がある州や市などの自治体の感染防止策の変更に伴い、米経済活動を再開した。教員や組合が「感染防止策に不安があるから」と開校に反対し、去年のようなオンライン授業を推奨しても、自治体が開校=対人授業に「GO」サインを出せば抗えない。
だから、それらの州では通学時に検温したり、教室内でソーシャル・ディスタンスをすることを条件に開校されるようになったのだが、夏休みの間にワクチン接種が10代の子供たちにも広まったことで、今では開校するのが当たり前となり、それに準じてクラブ活動も普通に再開されるようになった。
春から夏のスポーツである高校野球やサッカーはほぼ無観客で行われたそうだが、秋のスポーツであるアメリカン・フットボールが、人数制限無しで行われるようになった。それは米国社会に、ワクチン接種者が多数派になったという認識があるからだ。