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《現地最新》MLBは“満員”で「日本で言う高校野球」観戦もマスクなしの大歓声…米国スポーツ界のリアルな現状とは? 

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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posted2021/10/17 11:00

《現地最新》MLBは“満員”で「日本で言う高校野球」観戦もマスクなしの大歓声…米国スポーツ界のリアルな現状とは?<Number Web> photograph by Getty Images

MLB地区シリーズのアストロズ対ホワイトソックス(10月12日)のスタジアムは満員

外野の広告板に空きなし、チケットも完売

 米国のスポーツ界は今、「ワクチン接種をすれば感染の確率も、重症化の確率も低くなる」を大前提に経済活動がほぼ全面的に再開され、パンデミック以前の状況に急速に戻ろうとしている。「経済活動の再開はワクチン接種率8割超えを待つべき」などといういつかの議論も今ではどこへやら。普通に生活していれば、誰が接種者で誰が接種者じゃないかなど分からないまま、元に戻ろうとしている。

 だから、8月開幕のカレッジ・フットボール(大学のアメリカンフットボール)のアラバマ大対マイアミ大の試合が7万1829人、オーバーン大対アクロン大の試合が8万3821人もの観客動員数を記録したのだ。件のア・リーグ地区シリーズのアストロズ対ホワイトソックス戦も4万0497人、翌日の第2戦は4万1315人で連日の「満員札止め」を記録した。

 ア・リーグ地区シリーズの試合前、アストロズの筆頭オーナー、ジム・クレインは、こう言っている。

「(2011年の)買収当初は『再建』を目標にしていたチームが、10年で5回、プレーオフに進出するようになったのですから、悪くはないです。でも、それはファンの皆さんのサポートのお陰なのです。(無観客の)去年と違って、今年は途中からお客さんも入れ、その数も増えましたし、外野の広告板にも空きはありません。地区シリーズのチケットはすでに売り切れてますし、その事実が我々のクラブを助けてくれているのです」

 オーナーがファンを称える。今年は選手からもそういう声をよく聞くが、一昨年までなら「まぁ、そう言っとかなくちゃならないもんなぁ」などと曲がった気持ちで聞いていた言葉が、今はとてもリアルに響く。

 簡単な話だ。チームの収入も選手の年俸も、すべてはプロ野球チームの経済活動から賄われる。ファンが大好きなチームを応援するために球場に詰めかけ、チケット代=貴重な収入源となる。球場に行けないファンもテレビ観戦するため、中継権を持つテレビ局のチャンネルが含まれているケーブル・テレビや、衛星放送の契約をする。今ならMLBの有料ストリーミング・サービスを利用する人々もまた、収入源となっている。サイズや場所によっては、1試合4500ドル(1ドル110円換算で49万5000円)から15000ドル(同165万円)とも言われる球場の広告板を使用するスポンサーも、それを見るのがファンであると前提で大枚を払っている。

 アストロズのオーナーが口にしたファンやスポンサーのサポートに対する感謝の言葉は、去年パンデミックの影響で2カ月60試合、しかも無観客で行われ、経済的打撃を受けたプロ野球チーム経営者の正直な思いだった。

【次ページ】 それでも“軋轢”が起きている理由

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