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《現地最新》MLBは“満員”で「日本で言う高校野球」観戦もマスクなしの大歓声…米国スポーツ界のリアルな現状とは?
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2021/10/17 11:00
MLB地区シリーズのアストロズ対ホワイトソックス(10月12日)のスタジアムは満員
それでも“軋轢”が起きている理由
それから数日後、地区シリーズの舞台がヒューストンからシカゴへ移った10日、昨年は中止となったシカゴ・マラソンが開催された。スタート風景は例年通りに思えたが、主催者によると参加したランナーの数は、2019年の4万5956人から3万人を少し超える程度に落ち込んだという。それでも主催者は「去年のことを考えれば、充分なのです」と言う。
それはこの春、収容人員の20パーセントに人数制限をしながら、観客を受け入れ始めた頃のメジャーリーグ関係者の態度と似ていた。マラソンの取材現場にいる記者の数が極端に少なく、関係者のほぼ全員がマスクを着用しているという状況も、この春のメジャーリーグでは「普通」に見られた風景である。
その「普通」というのが厄介だ。メジャーリーグの「普通」をマラソンの取材現場で主張したわけでも、不満を表明したわけでもないが、心の中で「野球に比べると、遅れてるなぁ」と思ったのは確かだ。米国では某航空会社の従業員たちが、米政府が推進するワクチン接種義務に抵抗したことに端を発して、欠航便が続出するなどの問題も起きている。「ワクチン接種が終わり、すでに経済活動をバリバリ再開している人たち」と「今でも厳しく感染防止に努める人たち」との軋轢がある。
米国は元々、日本と違って、冬にマスクなどしている人がほとんど皆無だった国だ。室内施設に入る時はマスク着用が義務付けられている地域もあるが、基本的にはマスクをしていれば、多少なりとも奇異な視線を向けられる国である。
デルタ変異株への不安もあるはずなのに、その内、メジャーリーグの観客席や高校フットボールの会場でマスクをしているだけで、白い目で見られる日が来るかも知れない――。