野球クロスロードBACK NUMBER
《ドラ1指名確実視》森木&風間の比較に「何とも言えない」の真意…明徳・馬淵監督が“高校ビッグ3”へ突きつけた現実と助言
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph bySankei Shimbun
posted2021/10/10 17:04
名将・馬淵史郎監督が語っていた速球派ドラフト候補への“助言”
150キロを超えるストレートは、あくまで球種のひとつにすぎない。インコース、アウトコースに投げ分けられるコントロールや緩急と、大きな武器を生かす術を見出さなければうちには勝てないよ――馬淵はそう告げているようにさえ感じた。森木と風間の比較に「何とも言えない」と難色を示していたのは、そのためでもあるのだろう。
それだけの説得力が、今年の明徳義塾にはあった。センバツに出場し、夏は甲子園ベスト8まで進出したチームを、馬淵は「THE高校野球のよう」と胸を張った。
「明徳の野球は本来、細かいことをしっかりやれることなんです。キャッチボールから始まって、守備、バント……。本当はね、(準々決勝で敗れた)智弁学園さんのような4番バッターが欲しいですけど(笑)、170センチそこそこの体が小さい選手が多くても、一生懸命に細かいことをやっていればここまで勝てるんだよ、と証明できたと言いますかね。全国の高校球児の参考になるようなチームは作れたと思っています」
そんな高校野球を地で行くチームが、超高校級ピッチャーを攻略したこと。何より「スピードだけでは勝てない」と、彼らに教訓として植え付けたことに大きな意味があった。
「真っすぐだけでは勝てないと学びました」(風間)
明徳打線に6安打5四球と苦しめられながら、6回8奪三振と意地を見せた明桜の風間は敗戦後、自らのピッチングと真正面から向き合い、先を見据えるように声を張っていた。
「真っすぐだけでは勝てないと学びました。今後は変化球でも空振りが取れるように精度を磨いていきたいです。ここで悔しがるより、課題を克服して上でやれるようにしたいです」
高校野球屈指の戦略家に敗れた風間と森木。そして、今夏の甲子園を制した智弁和歌山に県大会決勝で敗れた小園。逸材たちは、150キロのストレートを砕かれ、敗れた。
その悔恨こそ、さらなる飛躍への第一歩だと真摯に受け止めることができたならば、彼らはこれから、もっと強くなる。
目前に控えた「高校BIG3」運命の日。
将来への期待値は、最上級の評価でもってプロから提示されるはずである。