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阪神・佐藤輝明“復活”のヒントは「大谷翔平」と「ヤクルトの破壊力」に? タイガース元4番・濱中治が示した仮説とは
text by
豊島和男Kazuo Toyoshima
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/10/08 11:06
10月5日に60打席ぶりとなる安打を放った阪神・佐藤輝明。ルーキーの復調は佳境に突入したペナントレースにおいてカギを握っている
現役引退後は15年から19年までの5年間は阪神でコーチとして手腕を発揮。大山悠輔ら長距離打者の育成に携わった。
今年も春季キャンプから阪神タイガースに密着。シーズン開幕後もバックネット裏から各打者をチェックする日々を送っている。
「投手側から見たときに、背番号8が見えすぎていることが気になるところですね。調子がいいときは、あまり背番号が見えていませんでした。主に右肩が入り過ぎているためにバットが遠回りして、バットが出てこず、バットのヘッドも走らない状態です。あと、早く始動はしているものの、打ち出すときに右足が着いてから、すぐに振りだしているために“間(ま)”、タイミングが取れていません。結果が出ていない分、ボールを長く見たいという心理が働き、タイミングも狂ってきていたと思います」
打撃フォームの修正ポイントを具体的に解説した。また、元打撃コーチとしての視点からも言及。不振からの完全脱出へ向けた練習方法を明かした。現在の佐藤に合う可能性があると判断した練習法の1つが「スローボール」を打つことだった。
スローボールで生まれる“間”
「首脳陣の方々も一生懸命に指導や練習で工夫をしたり、サポートされています。その中でボールとバットの距離が取れていない佐藤選手は練習で速いボールを打つより、山なりぐらいの遅いボールを打ち返すことを練習の一環として取り入れたらいいと思います」
打撃投手が投じる“打ちやすい”ボールではなく、あえて“打ちにくい”ボールを打つ練習を提案した。
打撃練習に限れば速球は体の反応だけで対応が可能。しかし遅い球の場合は、しっかりとタイミングを取って、素振りと同じ打撃フォームでスイングしなければ対応が困難であると説いた。スローボールを打つことで自然と“間”が生まれる利点があると強調。
また、仮に打撃コーチの立場だった場合には精神的な負担軽減を目的に首脳陣と選手の間で「打席の中での制約」を決める方法を取り入れるとも話した。
「空振り、三振はOKだと言いますね。基本的には低めが得意なバッターです。ただ、低めはどれだけ空振りしてもいいけど、高めを振ることはダメだと伝えます。あれも、これもダメではしんどくなりますし、窮屈になります。少しでも気持ちが楽になるように、打席での約束事は1個だけにしますね」