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《シーズン2カ月半で2000万円プレーヤーも》非常勤講師を退職→本場インドに挑む23歳日本人が語る「カバディの知られざる世界」 

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平野貴也

平野貴也Takaya Hirano

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photograph byTakaya Hirano

posted2021/10/06 17:00

《シーズン2カ月半で2000万円プレーヤーも》非常勤講師を退職→本場インドに挑む23歳日本人が語る「カバディの知られざる世界」<Number Web> photograph by Takaya Hirano

カバディの本場インドに挑む阿部哲朗(23)

 だが、外国籍選手である阿部には厳しい洗礼が待ち受けている。過去に挑戦した日本人選手5人中4人は出場機会を得たが、先発定着には至っていない。

外国籍選手は戦力と見なされない部分も

 2シーズン参加した経験を持つ高野は「練習に行っても、横で見ていろと言われたり、若手と一緒に筋力トレーニングしておけと言われたりで、実戦形式の練習には参加させてもらえない。リーグのルールで外国籍選手を呼ぶものの、チーム内では戦力と見なされていない部分がありました」と現地で悔しさを味わった経験を持つ。

 日本代表の主軸を担う下川正將も「どうしてもインド人グループで固まる傾向があり、日本人選手は自分から積極的に行動しないと、練習もまともに参加させてもらえません。阿部は認められるくらいの実力はあると思うので、とにかく練習からアピールして、思い切りプレーしてほしい」と、地元選手のコミュニティに入るためのアドバイスを交えて、阿部にエールを送った。

 攻撃者は1人でプレーするが、守備は連係が重要。その点も、定位置獲得のハードルとなる。

「人数合わせの外国籍選手」に終わらず、チーム内でポジションを獲得できるか。阿部の挑戦は、日本カバディ界に大きな意味をもたらす。

 次世代の日本代表の中心を担うと期待されている阿部は「来年(2022年)アジア大会があるので、何か収穫を得て、一皮むけて、日本代表チームに何か刺激を与えるような形で戻ってきたいです」と話した。

漫画『灼熱カバディ』から競技を始める人も

 この数年、国内では漫画『灼熱カバディ』の人気により、学生を中心に新しい競技者やチームが生まれている。一方、社会人が競技を続けるための環境の改善は進んでおらず、一時的なブームに終わる可能性を否定できない。

 非常勤講師として母校、自由の森学園高校でカバディ部の指導にあたってきた阿部は、「日本では定期的に試合をできる環境がなく、練習ばかり。それは学生が競技を続けないひとつの理由だと思います。今の高校生は僕が同世代だった頃では考えられないくらいにレベルが高い。それでも大半は卒業と同時に競技を辞めてしまう。彼らに、ひとつの挑戦の形を見せられるのは嬉しい」と話した。

 サッカー選手が欧州リーグに挑戦するように、カバディにもインドのプロリーグという場があることを、阿部は自身の挑戦で知らしめるつもりだ。そして、最高峰の舞台で得た刺激を日本代表に持ち帰る。ひいては、日本カバディ界がターゲットとしている2026年の愛知・名古屋開催のアジア大会でのメダル獲得、国内での競技アピールにつながるという青写真だ。

 PKLへの挑戦は、国内競技の盛り上げにも大きな価値を持つ。

【次ページ】 非常勤講師を退職してインドへ

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#阿部哲朗

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