SCORE CARDBACK NUMBER
「絶対に三振がとれるボールも」五輪金・ソフトボールの次世代エース後藤希友(20)の《上野由岐子の後継者》という自覚
posted2021/10/09 06:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
KYODO
堂々たる投げっぷりだ。東京五輪で誕生したニューヒロインの1人、ソフトボール金メダル左腕の後藤希友が、トヨタ自動車のエースとして9月4日に再開した女子日本リーグで一回りも二回りも成長した姿を見せている。
メキシコ代表ダラス・エスコベド投手との投げ合いになった豊田自動織機との後期開幕戦では、3安打10奪三振、6-0の完封勝利で好スタートを切った。初回にいきなり連打を浴びて無死一、二塁とされたが、そこから相手の中軸を3者連続三振。「五輪でも走者を背負ってリリーフすることが多かったので、ここは見せどころかなと思った。緊迫した場面も冷静に投げることができたのは世界の舞台を経験して一歩成長したからかなと思う」(後藤)
同11日には大垣ミナモ戦に先発し、4回1安打無失点。ここでも2回に主力打者を3者連続三振に抑えた。配球はストレートとチェンジアップが中心で球種は少ないが、「絶対に三振がとれるとわかって投げたボールも何球かあった」と勘所をしっかり押さえている様子が伝わる。
「好きな髪型を楽しむのは今しかないかな」
同12日のデンソー戦では、先発した米国代表モニカ・アボット投手が相手の打球を手に当てて負傷交代するアクシデントがあり、後藤が緊急登板。4回に迎えた無死満塁のピンチでは2者連続三振を奪った後の打者をセカンドゴロに打ち取り、「東京五輪がフラッシュバックした」と笑顔を浮かべた。
「好きな髪型を楽しむのは今しかないかな」と、ポニーテールからショートカットへ軽やかにイメージチェンジした20歳の姿に、トヨタ自動車の中西あかね監督も「五輪であれほど多く登板するとは思っていなかった。自信を持って帰って来てくれた」と目を細めるばかりだ。
東京五輪の金メダルで大いに盛り上がったソフトボールだが、次のパリ五輪では行なわれないことが決まっている。2028年ロサンゼルス五輪での再復活へ機運を高めていくためには、ソフトボールならではのスピード感や緻密さを日本リーグでも見せ続けることが求められる。上野由岐子の後継者として期待が膨らむばかりの後藤は、その中心にいることをはっきりと自覚しながら、まずは11月にプレーオフを迎える日本リーグでの優勝を誓っている。