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《シーズン2カ月半で2000万円プレーヤーも》非常勤講師を退職→本場インドに挑む23歳日本人が語る「カバディの知られざる世界」
text by
平野貴也Takaya Hirano
photograph byTakaya Hirano
posted2021/10/06 17:00
カバディの本場インドに挑む阿部哲朗(23)
シーズンごとにオークション形式で選手を獲得してチームを編成(※前シーズンからのプロテクトあり)するのが特徴で、今回の最高入札額は、地元インドの攻撃の名手として知られるパーディープ・ナーワルで約2466万円だった。
阿部の入札額は約150万円だった一方で
メジャー競技の年俸には劣るが、シーズンが約2カ月半で終わることを考えれば高額と言える。トップ選手の入札額は、リーグ発足から7年で10倍以上に上昇している。阿部の入札額は、外国籍選手カテゴリーCの基本設定である100万ルピー(約150万円)。僚友のシッダールト・シリス・デサイ(インド)は昨季の最高入札額選手で、2000万円クラスの値がついた。
普段からPKLの映像を見ている阿部は「彼は長身のレイダー(攻撃手)で、人気選手。すごく良いタイミングでタックルをされても、フィジカルの強さで引きずって帰陣できる。(守備で)捕まえたいですね。ああいう選手と一緒にやれると思うと、ワクワクします」とイメージを膨らませていた。
「カバディ、カバディ……」とマントラを唱えながら
阿部がカバディを始めたのは、高校1年のとき。姉が、自由の森学園高校カバディ部のマネージャーを務めていたのがきっかけだった。
大学3年生となった2018年には日本代表としてアジア大会にも出場した。カバディは1人の攻撃者が「カバディ、カバディ……」とマントラを唱えながら、複数の相手がいる敵陣に入り込み、相手にタッチをして自陣に戻って得点する。帰陣を阻止すれば守備側の得点となるため、激しいコンタクトを伴う。阿部は主にアンティ(守備者)として活躍。自陣に侵入して接触を狙ってくる相手のレイダーを捕らえる。
日本代表を率いる新田晃千監督は「今までの選手と圧倒的に違うのは、アンクル(足首)キャッチのうまさ。靴一足分ずれれば、タッチを許して抜けられる難しさがありますが、足首をつかんで持ち上げてしまえば、動きを確実に止められます。この技の反応がすごく速いし、逆サイドや周囲が見える視野の広さもあり、今までにいなかったタイプ」と阿部を評する。
日本の技巧派アンティが本場のインドで通用するか注目される。