水沼貴史のNice Middle!BACK NUMBER
《セルティックで11試合8ゴール》古橋亨梧が独占取材で明かした“ドリブラー”から“受け手”に変わった理由…「ゴールを決めない男」の覚醒とは?
text by
水沼貴史Takashi Mizunuma
photograph byGetty Images
posted2021/10/06 17:02
リーグ復帰戦となった10月3日アバディーン戦では、クロスボールに胸で合わせて先制点をマークした古橋亨梧。W杯アジア予選での活躍も期待される
水沼 (オドソンヌ・)エドゥアールという、相棒でもあり、ライバルでもあった選手が移籍しました(9月1日にプレミアリーグのクリスタル・パレスへ)。彼のプレミアデビュー戦を解説したのですが、いきなり2ゴールを決めるなど、びっくりするような活躍で。そういった力のある選手がスコットランドにいっぱいいるんだなと驚きました。
古橋 彼と僕はタイプが違うので、いてくれたら助かる時もありましたし、逆に僕がワントップで出たいなと思った時もあったので複雑ですね(笑)。スコットランドからプレミアに挑戦する選手は毎年たくさんいて、力のある選手は多い。刺激が多いリーグだと思います。
全体的にフィジカルも強いです。すごくガツガツくるし、球際は激しい。練習から足を踏まれたり、削られたりも普通で。試合で相手を背負うシーンでは容赦なく掴まれたり、つねられたりするので、ずる賢いというか、そういうところがうまいなあと。挑発に乗らないよう、上手く振り払ったり、相手の嫌がるプレーを心がけています。
水沼 そういう動き出しや相手を外すといった駆け引きは、日本にいた頃から意識していた?
古橋 (神戸で)今シーズンからFWで使ってもらえることが多くなって、より「駆け引き」は意識するようになりました。
水沼 どちらかといえば、古橋選手は生かされるタイプ。もちろん打開するドリブルも持っているけど、やっぱり(アンドレス・)イニエスタといったパサーの存在が大きかった?
古橋 (FC)岐阜の時代は、どちらかというとボールを足元で受けて、ドリブルで突っ込んでゴールに向かうという意識が強かったです。それがJ1では通用するときとしない時がありました。同じ時期にアンドレスも神戸に加わって一緒にプレーする中で、こう動けばパスがくるという感覚が見つかって、自分の中で「正解」「道」が見えてきたんです。
彼からも「見ているから動き出して」と言われましたし、しっかり準備できていればパスが来ますから(笑)。(イニエスタは)練習でも常に力が抜けていて、1人だけ見ている世界が違いました。毎回「うわ、出した」「そこを通す?」と驚いていましたね(笑)
あとはダビド・ビジャという素晴らしいお手本と1年間一緒にプレーしたことで、動き出しの質、ゴール前での駆け引き、シュートパターンを勉強できました。見て勉強して、頭で考えられるようになって、それが今では自然と考えなくてもできるようになったのかなと。
「いつの間にか一番の強みになっていた」
水沼 ドリブラーが受け手に変わっていくっていうのは面白いですね。しかも、考えなくても体が反応する、というのは相当な域まで達している証拠。私も現役時代はドリブルが好きなタイプでしたが、試合では究極、ドリブルするよりも相手の背後に抜けた方が簡単でしょと思っていて。古橋選手は段階的に変化、成長しているなと感じていました。
古橋 体が大きい選手ではないのでポジショニングが命。チームメイトあっての動き出しだと思っているので、とにかく動き出し続けること、コミュニケーションを取ることが結果を出す上で一番の近道かなと思えるようになりました。
よく「なぜあんな動き出しができるんですか?」と聞かれるのですが、正直、感覚で動いている部分が多いんです(笑)。もちろん、考えながらポジションを取ることはありますけど、直感を信じてやってきたので。それが、いつの間にか自分の一番のストロングポイント、強みになったという感じです。
水沼 古橋選手は短い距離のスルーパスを受けることもできるし、ロングパスで背後を取ることもできる。これも強みだなと。どっちの方が好きなの?(笑)
古橋 どっちも好きです(笑)。とにかくゴールに繋がれば良いので、どちらがどうとかはあまりないです。あとは僕が動き出しを続けることで相手のDFラインも下がるので、足元でボールを受けて能力を発揮できる選手にスペースを与えられる。チームでも代表でも上手い選手が多いので、彼らを活かせるように泥臭く動いています。