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「この試合が分岐点となった」フランス代表監督デシャンがチームに授けた、ロシアW杯アルゼンチン戦勝利への秘策 

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posted2021/10/06 06:01

「この試合が分岐点となった」フランス代表監督デシャンがチームに授けた、ロシアW杯アルゼンチン戦勝利への秘策<Number Web> photograph by L’Équipe

18年ロシアW杯ではフランスを優勝に導いたデシャンだが、ユーロ2020ではフランスはベスト16で敗退した

 ベンジャマン(・パバール)の同点ゴール(57分)は、左SB(エルナンデス)が右SB(パバール)にクロスを送り、ボールを受けた右SBがボレーで決めた得点だった。こんなことが実際に起こるなんて想像できるか? 練習でパターン化できると? 彼らの役割を完全に超えている。ある瞬間に起こる爆発としか言いようがない。際立ったキャラクターと苦境を跳ねのける力、個人でイニシアチブを執れる能力は、選手たちがそれを持っているかどうかだ。監督にはどうすることもできない。

 逆転の9分後に2対2の同点に追いついたわれわれは、そこからさらにブーストを上げた。すべてが瞬く間に起こり、4対2とリードするまでにこれまでにない力強さが漲った。

 どんなゴールを決めたかは特筆に値する。2点はスピーディーな攻撃から、2点はポゼッションから生まれた。つまりわれわれは、スピードばかりに頼った攻撃をしたわけではなかった。特に4点目はウーゴ(・ロリス)から始まり、キリアン(・ムバッペ)が決めるまでにブレーズ(マツイディ)やオリビエが5~6本のパスを繋いだものだった。

コーチングと試合終盤《アグエロの投入で状況が変わった》

 3対2となった時点でアグエロが投入(66分)され、アルゼンチンの前線が強化されるとともに状況も変わった(システムを4・4・2に変更)。ただ、その2分後に4点目が入り、われわれのリードはさらに広がった。メッシが多少フリーになり、本物のストライカーの傍らでプレーすることでボールを受ける機会が増えるにせよ、私はふたりのCBにアグエロをケアするよう指示した。そしてアルゼンチンの中央でのプレーは相変わらず限定されていた(メッシに通ったパスは、マスケラーノの2本とバネガの4本だけだった)。

 選手交代については、最初に代えたのはブレーズ(75分)だった。すでに警告を受け、次戦の出場停止が決まっていたが運動量も落ちていた。ココ(コランタン・トリソの愛称)が彼の役割を受け継ぎ、最後の15分間を大過なくプレーした。次に代えたのは、同様に献身的にプレーしたアントワンだった(83分)。ナビル(・フェキル)とアントワンは同じタイプで、ナビルにはボールをキープすることを求めた。

 リードされたアルゼンチンには攻める以外の選択肢はなかった。われわれはほとんどボールを保持できなかったが優位には立っていた。サイドの守備を強化するために、キリアンに代えてフローラン(・トバン、89分)を投入した。

【次ページ】 心に残るシーン《グループの連帯感》

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