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「この試合が分岐点となった」フランス代表監督デシャンがチームに授けた、ロシアW杯アルゼンチン戦勝利への秘策
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フランス・フットボール誌France Football
photograph byL’Équipe
posted2021/10/06 06:01
18年ロシアW杯ではフランスを優勝に導いたデシャンだが、ユーロ2020ではフランスはベスト16で敗退した
ただ、選手たちは、私が求めたよりも低い位置で守っていたものの、守備に関しては自信と手ごたえを感じていた。私が出した指示は次の3つだった。
1)われわれが戦っているのは戦士たち(ウォリアー)を揃えた経験豊かなチームだ。彼らは好んでわれわれを挑発してくるが、決して相手にしてはいけない。別の言葉で言えばこうなる。自制心を保ち続け常に警戒を怠らず、相手のミスを誘え!
2)もっとシュートを積極的に打て! ペナルティエリアの外側からでも構わない。シュートで相手のラインが乱れ、突破する契機にもなる。
3)ボール支配をもう少し高めて、ピッチをもっと幅広く使え。
だが、後半の入りは悪く、わずか3分で失点を喫した(メルカドのゴール)。ただ幸いなことに、相手のリードは長くは続かなかった。逆転されたとはいえ、これがこの大会での唯一最大の危機であるとも思えなかった。
20分間の熱狂《強いのは自分たちだ》
2対1とリードされて、われわれは敗退の危機に直面した。ほどなくアルゼンチンは後方深く退いて、4人のDFと5人のMF、前線にメッシという陣形を敷いた。
こんなときに監督は、ベンチからどうやって試合に介入すればいいのか? 叫んだり、身振り手振りで選手に指示を伝えるのか? そんなことをしても、同じサイドの選手を除いて誰も聞こうとはしない。
前半はマスチェラーノが、いつものようにふたりのセンターバックの間にポジションをとってボールを配球していないことに気づいたから、私はアントワンに大声でこう怒鳴った。
「ふたり(のセンターバック)についていても意味がない。彼らはオリビエ(・ジルー)に任せて、もっとマスチェラーノに注意しろ。CBのふたりは重要じゃない」
だが、試合が進むにつれて……試合の前にはあらゆる事態を想定して備える。すべてを予測しコントロールするために綿密に戦略を立てて、選手たちも何をどうすればいいかを完ぺきに理解する。ただ、そこから先は……始まってしまったら試合は選手たちのものだ。その真実は変わらない。