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「夢を見るな。現実を目でしっかりと見続けろ」フライブルクの監督が“タイトルとは無縁”でも11年もクビにならないワケ
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/09/30 17:03
フライブルクを率いて11年目を迎えたシュトライヒ監督。高い評価を得ながらも、長年中堅クラブを率いる理由とは?
成長機会を最大限に生かすため、最大限の学習効果を得るため、トレーニングでは全力で取り組むことを求めている。
疲れた身体にムチを打って無理をさせるわけではない。あくまで身体や頭や心のケアをしっかりとしながら、トレーニングやゲームでベストパフォーマンスを発揮できるように丁寧にマネジメントしている。
シュトライヒの要求はプロフェッショナルだ。とても厳しい。さぼりを一切許さない。その一方で人情味もある。だから、選手は監督の声にいつでも耳を傾ける。
交代で下がってきた選手を抱き寄せる。声掛けを忘れない。試合に出られない選手も優しく、熱く励まし続ける。試合に出られないことに納得する選手はいない。それでも、フライブルクには不満を口にしたり、チームの雰囲気を害したりする選手はいない。
ここでの取り組みが自身の成長にどれだけプラスになるか、みんなわかっているからだ。だからどんどんチームが成長していく。それがクリスティアン・シュトライヒという監督の素晴らしさだ。就任して10年が経ったというのに、マンネリ化がまったくない。
ドイツ代表の監督候補に名前が挙がったことも
指導者としての評価はドイツ国内では非常に高い。バイエルンやドイツ代表の監督候補として名前が挙がったこともある。それでも、シュトライヒはこのフライブルクの地から離れようとはしない。
「クラブというものは、誰かや何かに属しているものではない。クラブとはそのクラブとアイデンティティをともにした仲間で構成されているのだ」
シュトライヒにとって、堅い絆で結ばれた信頼しきれる仲間とともにブンデスリーガの猛者と戦い続ける日々は、何よりの生きがいなのだろう。
「財布の紐を緩めて補強策を進めるクラブとは違うやり方をしようとする。それが私たちのモチベーションだ」
シュトライヒは、そんなことも言っていた。
身の丈に合った健全経営、明確なコンセプトを持った育成哲学、選手を正しい道へ導く名将。資金力ではビッグクラブに太刀打ちできないフライブルクのような小さなクラブが、ブンデスリーガで確かな存在感を示し続けている。
それは、とても素敵なことではないだろうか。