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「夢を見るな。現実を目でしっかりと見続けろ」フライブルクの監督が“タイトルとは無縁”でも11年もクビにならないワケ
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/09/30 17:03
フライブルクを率いて11年目を迎えたシュトライヒ監督。高い評価を得ながらも、長年中堅クラブを率いる理由とは?
サッカーに集中できる環境を求める有望な若手が集う
掲げた目標を達成し続けているという点で言えば、フライブルクは間違いなくブンデスリーガにおけるベストクラブの1つだ。今季は、第6節を終えて3勝3分。いまだ無敗の5位につけている。いつでも明確なコンセプトと陣容で継続的に取り組み、成長し続けているからこそ、有望な若手が集まってくる。
フライブルクは人口20万人強の中型都市だ。
古き良き雰囲気が残る旧市街はこぢんまりしているが、必要なものは手に入るくらいに充実している。周りを森に囲まれたシュバルツバルト・シュタディオン脇の練習場には喧騒がまったくない。来月には新スタジアムに引っ越しするが、市内から適度に離れているため、選手はサッカーに集中できる。そんな環境を求める選手が、このクラブに集まってくる。
それでも一時期は、ギラギラした野心を持ち、常に格上クラブへ移籍してレギュラーを勝ち取り、さらに上のレベルのクラブへステップアップしていくというキャリアプランを考える選手が少なからずいた。
だが、現在は選手も様々な情報を持っている。どこで、誰の下で、どのように取り組むことが自身の成長につながるのか、リサーチする選手が間違いなく増えてきている。
そうした時代の変化の影響もあるのだろう。以前は活躍すると翌シーズンに移籍する選手も多かったが、最近は主軸級の選手でも契約延長を交わし、可能な限り、じっくりとこのクラブでプレーしようとする傾向が出てきている。
自分の殻を破るために必要なことを要求
例えばイタリア代表でもあるビンチェンツォ・グリフォは、宇佐美貴史が所属していた当時のホッフェンハイムでユースからトップデビューを飾った。優れたキックをはじめ卓越した技術の評価は高かったものの、なかなか主軸として活躍することができないでいた。しかし2015年、当時2部のフライブルクへ移籍すると才能が開花。主力として活躍し1部昇格に貢献した。
17年には7位という好成績を収め、自身はシーズン後に強豪ボルシアMGへ移籍。ただ、そこでは十分な出場機会を得ることができず、ホッフェンハイムへ移ったもののここでもパッとしない。それが19年に2度目となるフライブルクへの移籍を決断すると、水を得た魚のように躍動感のあるプレーを披露し、イタリア代表にも招集されるようになった。