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《現役引退》南ア撃破の“10番”小野晃征が次世代SOに期待する2つのこと「僕が意識していたのは『人を知る』ことです」 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNobuhiko Otomo

posted2021/09/28 11:03

《現役引退》南ア撃破の“10番”小野晃征が次世代SOに期待する2つのこと「僕が意識していたのは『人を知る』ことです」<Number Web> photograph by Nobuhiko Otomo

2016年度、サントリーのシーズン全勝に貢献した小野晃征(左)。筑波大に在学したまま日本選手権決勝に出場したパナソニックSO山沢拓也をねぎらった

「僕のプレースタイルは、周りの選手の強みをどれだけ引き出すか。自分がスペシャルなプレーをやるわけじゃないけれど、強いボールキャリアーに早く渡すこと、ディフェンスでは一人にならずに強いディフェンダーと一緒にタックルすること。自分が中心というより、周りのみんなのつなぎ役、みんなの力を引き出したかった」

 まさしく、長年、日本の選手に足りない、言い換えると海外のトップクラスの司令塔(ベリック・バーンズやダン・カーターなど)が優れていると言われてきた部分だ。人の力を引き出す力、人とつながる力、コミュニケーション力。

「僕が意識していたのは『人を知る』ことです。この選手はこういう場面ではこんなことをしたがる、こういう形だと力を出す、このタイミングでボールをほしがる……そういう傾向を理解して、試合中も言葉や表情で仲間の状態を把握して、ボールを渡す。

 あと対戦相手を観察することも大事です。事前の分析もあるけれど、試合中の表情や口調、ボディランゲージからメンタルの状態を読み取って、次にしてくることを予測する。たとえば東芝にいたデイビッド・ヒルなんかは、体が大きくてフィジカルに自信があるから、上手くいかなくてフラストレーションがたまると自分でボールキャリーを仕掛けてくることが多い。そういう分析、予測はずっとしていました」

これからの「10番」に期待すること

 自分の後輩にあたる日本代表のSOについてはどう見ているのか。今秋のオーストラリア戦と欧州遠征に向け発表された日本代表候補に、SOは2019年W杯組の田村優と松田力也の2人しか選ばれていない。

「ジェイミーとしては、コロナの影響でなかなか経験値を高められなかった現在、チーム作りをこのチームのラグビーに慣れている2人に任せたいんだと思う。優はキックとパスの技術に関してはワールドクラスだし、W杯を2大会経験している。力也は昨季、日本人SOとしてパナソニックを久しぶりの優勝に導いた。自チームでチャンピオンシップを取ったという経験はやっぱり大きい。23年のW杯までこの2人で行けるかどうかは分からないけれど、今はこの2人が抜けている」

 2人を追う、次の世代には何を期待するか?

「日本人SOのスキルレベル自体は海外と比べても高いと思います。何が違うかというと、外国人のSOたちは自分のプレーだけでなく、ゲームプランを理解して、それに従いながら周りの強みを引き出せる選手が多い。次の世代のSOには、自分のスキルを高めることと同じくらい、周りの力を利用するコミュニケーションスキルを身につけてほしい。

 もうひとつは英語力ですね。トップリーグでも外国人HCが8割くらいになっていたし、リーグワンではもっと増えるかもしれない。HCとコミュニケーションをとって、意図を理解してゲームをリードして行くには英語力が大事になる。それができれば外国人SOとも勝負できるし、選手自身が海外に出て行くためにも役に立つ」

 それは小野のこれからの仕事にも関係してきそうだ。

【次ページ】 セカンドキャリアは?

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