ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
「我らのキャプテン、ここにあり!」ドイツ1部で若きチームを鼓舞する遠藤航…その戦闘姿勢と“柔和なハンドタッチ”の意味
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2021/09/26 17:45
今季よりシュツットガルトのキャプテンを務める遠藤航。若い選手が多いチームをいかにしてまとめ上げるのか
味方と頻繁にハンドタッチを交わす
2週間後の第4節は、アイントラハト・フランクフルトのホーム、ドイチェ・バンク・パルクでの一戦。遠藤は当然スタメン出場。対するホームのアイントラハトは鎌田大地が先発しましたが、長谷部誠はベンチスタートとなりました。
キャプテンとしての威厳を備える遠藤は、コイントスで主審やこの日アイントラハトでチームキャプテンを務めたDFマルティン・ヒンターエッガーと会話しています。日常会話での英語を十分に身に着けている遠藤は、ドイツ語の習得にも余念がありませんが、一体何語で、何を話していたのでしょうか。
そして、今一度確認してみました。遠藤が味方とハンドタッチを交わしているか否か。やっぱり頻繁にしていました。むしろ、その頻度が増したくらいです。脇腹付近での手の交わし合いを「ミドルタッチ」と称するなら、味方の背中にそっと手を置いてねぎらいの意を示す所作は「ビハインドタッチ」でしょうか。
この日のシュツットガルトは終盤に相手キープレーヤーのフィリップ・コスティッチに先制点を奪取され、しかも味方の退場処分で数的不利という大劣勢に立たされました。
しかし、FWオマル・マルムシュの同点ゴールが決まる展開でドローに持ち込みました。同点の瞬間の遠藤はマルムシュと「ハイタッチ」を交わしましたが、踵を返して、すぐに自らのポジションへ戻っていきました。心は熱く、態度はクール。それが、今季の遠藤が実践するキャプテンシーの示し方なのでしょう。
試合後に長谷部の言葉に耳を傾ける
試合終了直後、試合出場が叶わなかったアイントラハトの長谷部誠がゆっくりと遠藤の元へ歩み寄っていきました。ペコリと頭を下げた遠藤が先達の言葉に耳を傾けています。周囲の喧騒をよそに、そのシチュエーションは数分間続きました。
ともにブンデスのチームキャプテンを務め、Jリーグ時代の在籍クラブも一緒、そして日本代表の一員としてもプレーしてきたという共通点のある両者は、長い間、今の彼らが戦うピッチで意義のある交流をしていました。
オフ期間もなくフル稼働し続ける負担は甚大で、その点の心配はあります。それでも今の遠藤が自らに課せられた責務を意気に感じ、溌剌と、彼らしくピッチで躍動する姿は、今を生きる、この時にしか目撃できない。
今シーズンの遠藤航が刻む掛け替えのない軌跡を、今後も追い続けたいと思います。