ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
「我らのキャプテン、ここにあり!」ドイツ1部で若きチームを鼓舞する遠藤航…その戦闘姿勢と“柔和なハンドタッチ”の意味
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2021/09/26 17:45
今季よりシュツットガルトのキャプテンを務める遠藤航。若い選手が多いチームをいかにしてまとめ上げるのか
浦和レッズ、そしてシント・トロイデン(ベルギー)で遠藤とチームメイトだった関根貴大(浦和)から、こんな話を聞いたことがあります。
「わっさん(遠藤)は、かなりのリアリストだと思うんですよね。試合に負けた後は仲間に結構厳しい言葉を投げかけることがあります。ちなみに僕はシント・トロイデン時代に加入後初得点を決めたとき、そのゴールは試合終了間際の同点弾だったんですが、わっさんが喜んでいる僕の横へ寄ってきて『良かったね。でも、まだ同点だからね。すぐ自陣へ戻ってね』と囁かれたんですよね(笑)」
所属チーム、もしくは代表チームでPK戦となったときに、彼は必ずキッカーのひとりに名乗りを上げます。「できるだけ勝敗が決するタイミングで蹴りたい」らしく、その責任を果たす気概が感じられます。
ADVERTISEMENT
今夏の東京五輪では、ノックアウトステージ初戦のU-24ニュージーランド代表戦がPK戦決着となり、U-24日本代表は相手が2人目、3人目と続けてPKを失敗する中で上田綺世(鹿島)、板倉滉(シャルケ/ドイツ)、中山雄太(ズウォーレ/オランダ)、吉田麻也(サンプドリア/イタリア)の4人全員が決めて勝敗が決しました。
このPK戦、5番手に志願していたのは遠藤だったことが後に明かされています。物事に動じず、勝敗の責任を一身に背負う覚悟を備えている。その振る舞いこそが、彼をチームリーダーたらしめる要素であることは明らかです。
今季のリーグで最も若い平均年齢24.8歳のチーム
そんな彼をこの眼で目撃したくて、ドイツ・ブンデスリーガ第3節・フライブルク戦、第4節・アイントラハト・フランクフルト戦の2試合を現地取材してきました。
フライブルク戦はメルセデス・ベンツ・アレナでの一戦。コロナ禍中、フランクフルト在住の僕は約2時間半を掛けて当地まで車を走らせました。
スタジアム脇を流れるネッカー川の周辺まで着くと、白と赤のチームカラーで彩られたユニホームを着た人々が連れ立ってスタジアムへ向かっているのが見えます。収容人数の半分弱となる2万5000人の観戦が認められたシュツットガルトのホームは以前の賑わいを取り戻したような雰囲気で、試合前独特の高揚感を確かに漂わせていました。
僕はサポーターがどの選手の背番号を身に着けているのかを観察するのが好きなのですが、遠藤の背番号である3番は正直「チラチラ」といったところ。それでも彼が試合前のウォーミングアップでチームメイトを引き連れて颯爽とピッチに現れたとき、スタジアムアナウンサーが選手紹介で「ワタル!」と発したのに呼応してサポーターが「エンドウ!」と叫ぶ瞬間に立ち会い、このプレーヤーが着実にクラブの一員として認識されていることを実感しました。