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「持ち味は全力プレー」元々ヤンキースの若手有望株だったDeNAオースティンが、成功のために行った徹底研究の中身とは
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2021/09/27 11:03
プロ12年目、30歳のオースティン。ヤンキース、ツインズ、ジャイアンツ、ブルワーズを経てDeNA入りした
来日前は、いわゆるブレイキングボールが弱点だと言われていたが、アウトローへの対応も含め、しっかりとボールを見極めることで、豪快な長打をコンスタントに放っていった。1年目は65試合の出場ながら打率.286、20本塁打という上々の成績で終え、今シーズンは目下、首位打者争いに加え、常時OPS1.000以上の数字を残す、リーグ屈指のスラッガーとして存在感を示している。
以前、ソトに「日本に来てメカニクスの部分で変えたことはあったか?」と訊いたとき、「始動のタイミングを遅らせ、ボールをぎりぎりまで見るようにしたんだ」と答えていたが、オースティンはそのような変化は日本に来てからあったのだろうか?
「いや、正直バッティングのメカニクスに関して変えたところはないんだ。ほとんどアメリカ時代と一緒だよ」
オースティンはかぶりを振りながら言った。
「数年前、カリフォルニアで(MLBヒッティング・コンサルタントの)ブラッド・ボイヤーとクレイグ・ウォーレンブロックのチームにバッティングの指導を受けたんだけど、それが大きなインパクトになっていて、スイングやタイミングに関しては、それを継続しているんだ」
使用するバットは、来日時から長さ34インチ、重さ32オンス。長打に必要な最適なバレルを生むシャープなスイングは、他チームの脅威となっている。
走攻守のすべてに全力
本人が言うようにオースティンの代名詞といえば“全力プレー”なわけだが、昨季は守備でチャージし過ぎてしまいケガや脳震とうで戦線離脱を余儀なくされた。だが今季は多少の故障は抱えたものの、自身をコントロールしながら離脱することなく一軍でプレーを続けている。
そんなオースティンのプレーで今季非常に印象的だったのが、9月12日の阪神戦のワンシーンだ。初回、2-1でDeNAリードの場面、安打を放ちセカンドにいたオースティンはピッチャーのジョー・ガンケルに対し三盗を試みたのだ。決して俊足とはいえないオースティンである。その走塁意識の高さとムーブには誰もが驚いた。結局打者のファウルで進塁とはいかなかったが、意外ともいえる行動力と果敢に攻めに出る積極性こそオースティンの本質であり、また魅力でもあると再認識した。
「あそこは自分の判断でシンプルに次の塁を狙いに行ったんだよ。じつは交流戦の時期、足の具合があまり良くなくて、無理をして悪化させたくないといったジレンマがあったんだけど、すっかり状態も良くなったんで、ここはトライしていこうって」