ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
「持ち味は全力プレー」元々ヤンキースの若手有望株だったDeNAオースティンが、成功のために行った徹底研究の中身とは
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2021/09/27 11:03
プロ12年目、30歳のオースティン。ヤンキース、ツインズ、ジャイアンツ、ブルワーズを経てDeNA入りした
真剣に、そして挑戦的。心から野球を謳歌するその姿は見ていて爽快であり、若い選手の多いDeNAにあっていい影響を与えているようだ。牧秀悟や森敬斗といった将来を担う選手たちに対し、オースティンがにこやかに話しかけている場面をよく見かけることがある。盟友のソトは、オースティンの魅力を次のように語る。
「本当にグレイトガイだよ。ケガとか生活環境の変化とかいろいろなことがあるけど、彼には肉体的にも精神的にも負けない“強さ”があるんだよ。僕はそこをすごくリスペクトしている」
オースティンは来日2年目の今季「昨年よりも壁に当たる回数が減った」と、環境への慣れを口にした。そして改めて野球への想いを露わにするのだ。
「とにかくアメリカ時代から、自分らしく、自分のゲームをやろうって思っているんだ。その上でしっかりと野球を楽しむこと。力み過ぎることなく、背伸びもしなくていい。自分にできることをしっかりやろうって」
侍ジャパンの好敵手として
また今年、東京オリンピックが開催されたわけだが、オースティンはアメリカ代表の主軸として銀メダル獲得に貢献した。決勝も含め2度対戦した侍ジャパンにとってオースティンへの対策が一番のカギだったことは間違いない。コロナ禍での開催、オリンピック出場は自分のキャリアにとってとてつもなく大きな出来事だったと、オースティンは驚きをもって教えてくれた。
「これまで野球をやってきて一番楽しかった時間だったかもしれない。すごく不思議な気分だった。観客が入っていないにも関わらず、すごくエンジョイできたんだよ。一生に一度の経験だったし、本当に参加できて光栄だった。今後の人生のプラスになることは間違いないと思うよ」
子どものような笑顔を見せてくれたオースティン。オリンピックは日本という地を訪れ、結果を出していたからこそ巡ってきたチャンスだったといっても過言ではない。かけがえのない経験を得たことで、当然DeNAでのプレーにも力が入る。活躍をすれば「ヤッター!」と愉快なコメントを出すオースティンに、野暮かと思ったがタイトル争いについて尋ねてみた。「やっぱりそこはあまり気にしてはないんでしょうね?」と。
すると案の定「うん、そうだね」と、白い歯を輝かせ笑顔を見せる。
「数字はまったく意識していないね。個人が数字を目指してプレーしはじめると、どうしてもチームの雰囲気が悪くなってしまうんだ。だから僕は何度も言うけど、その日その日を全力でプレーして、その結果がどうあれ受け止める。そして最終的についてくるのが数字だと思っているよ」
まだ2年目のシーズンは終わってはいないが、どうしてオースティンが日本で成功できたのか理解できたような気がした。
規格外のパワーとスキルを武器とし、ブレることのないマインドを持つ。きちんと足元を見てチームのために戦える、その気質。常にハッスルプレーを見せるグレイトガイの躍動を、これから先も見つづけていきたい。