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「持ち味は全力プレー」元々ヤンキースの若手有望株だったDeNAオースティンが、成功のために行った徹底研究の中身とは
posted2021/09/27 11:03
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
KYODO
観る者のハートを鷲づかみにする“全力プレー”。
2020年2月、横浜DeNAベイスターズの新戦力として来日したばかりのタイラー・オースティンに問うたことがある。
「日本で成功するためには、個人差はありますが日本の野球や文化を素直に受け入れ、場合によっては過去やプライドを捨てなければなりません」
まだオースティンがどんな人間性を持ち合わせているのかわからなかった時期。かつてはニューヨーク・ヤンキースの『メガプロスペクト』と呼ばれた通算33本塁打のメジャーリーガーに対していささか失礼かとは思ったが、オースティンの覚悟がいかほどか知りたかった。
すると彼は真っすぐな眼をして言ったのだ。
「もちろん、そのつもりです。過去のことは関係ない。今の状況を素直に受け入れ、自分のできることを精一杯やろうと思っているよ」
さらに強い口調で次のようにつづけた。
「自分の持ち味は、どんな場面であっても“全力プレー”すること。ファンには闘争心や情熱をもってプレーする姿を見てもらいたい」
果たしてその言葉は事実であり、オースティンは血気盛んなスケールの大きなプレーで観衆を魅了し、瞬く間に日本の野球にアジャストしていった。
徹底研究の材料とした先人たちの情報
聞けば、来日前はミネソタ・ツインズ時代に同僚だったアラン・ブセニッツ(楽天)から情報を集め、さらにDeNAに合流してからは日本の野球を知り尽くした当時のアレックス・ラミレス監督やホセ・ロペス、2年連続本塁打王のネフタリ・ソトから日本の野球文化や日本人ピッチャーの特徴や傾向を知ることになったという。チームアナリストからのデータも含め、相手ピッチャーを徹底的に研究することでオースティンは成績に繋げていった。
「とにかく日本のピッチャーが自分に対してどのようなアプローチをしてくるのかに重きを置いてここまでやってきました。とくに同じ右のパワーヒッターであるソトからのアドバイスは、自分にとって助けになることが多かった」