野球クロスロードBACK NUMBER
本塁打、打点は減少も…“仕事人”浅村栄斗は動じない――その真価を表す「ある数字」《西川、柳田を抑えてパ・リーグ1位》
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2021/09/28 11:05
本来のスイングが戻ってきた楽天の“大黒柱”・浅村栄斗。チームをCS進出に導けるか!?
四球の獲得数に隠された浅村の「真価」
そのことを表す数字がある。四球だ。
現在の89個は19年に記録した自己最多の93個に迫るペースであり、2位の日本ハム・西川遥輝の79個に大差をつけてパ・リーグの1位。多さの背景として、相手ピッチャーから警戒されていることもあるが、目下、本塁打王争いを展開するオリックス・杉本裕太郎の43個とソフトバンク・柳田悠岐の57個と比べても、いかに浅村が打席でボールを見極めているかが分かる。
この姿勢は後半戦も不変であり、リーグ戦が再開された8月13日以降に22の四球を選んでいる。しかも、代打での途中出場を除けば、浅村が出塁しなかったのはたった4試合しかない。それを裏付けるかのように、出塁率はリーグ4位の4割3厘と高い数字を記録している。
「自分をホームランバッターだと思ったことは一度もない」
昨季の本塁打王。通算でも226本のアーチを描くだけに、どうしても「スラッガー」のイメージが先行してしまう。しかし浅村本人は、折に触れ「自分をホームランバッターだと思ったことは一度もないんです」と、念を押すように主張している。打率にしてもそう。浅村は3割越えを3度記録しているが、そこに執着することはない。
浅村が浅村でいられるのは、四球と出塁率も決して無関係ではない。
かつて、矜持を覗かせるように自らのスタイルを話していた浅村がいた。
「『打率が一番大事』ってわけでもないんで。打率が低くても出塁率が高ければ、チームに貢献できていることになるじゃないですか。3割を打てるのなら打ちたいですけど、そう思ったところでなかなか打てるものではないんで。打てないときにこそ、塁に出ることを一番に考えて打席に立つようにはしています」
耐え忍ぶ時期にこそ、より利他的に――。
最近の打棒を見れば、復調したのかもしれない。楽天が上位進出を果たすためには、当然の如く浅村の力は必要不可欠である。
だからといって、安打や本塁打、打点だけで判断するのは早計だし、悲観も不要。
なぜなら、打てなくても確実に仕事はする。それが、浅村という打者だからだ。