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《愛知出身という共通点》藤井聡太三冠に聞く「織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、誰が一番好きですか?」その意外な答えは?
text by
丹羽宇一郎 藤井聡太Uichiro Niwa Sota Fujii
photograph byKYODO
posted2021/09/18 17:06
9月13日に叡王を獲得し、史上最年少三冠になった藤井聡太氏。記念のマスコット「ペコちゃん」を贈られたことも話題に
藤井 1年当たりの対局数だと、今のほうが少し増えていると思います。
丹羽 じゃあ疲れますよね、藤井さんは若いからいいけど。疲れているときは勝てませんよね。そういうこと、ないですか?
藤井 今まで自分は、そういうことはないですけど、でも疲れているときの支障は確実にあるといいますか、やはり集中している状態と疲れによってそうでない状態とでは、思考の速度が全然変わってくる感覚があります。
丹羽 棋士は上のレベルに上がれば上がるほど、対局も増えて、忙しくなってきますよね。藤井さんは本当に忙しそうで、新しい仕事が増えていませんか?
藤井 そうですね。はい、少しは。
丹羽 藤井さんに聞いてみたいことがあって。「将棋を指していて疲れたことはない。好きなことをやっていて、疲れを感じたことはない」と言っていました。これはどういうことかなと。
2400年前に生きた古代ギリシャの哲学者、アリストテレス(前384年~前322年)が、人間にとって非常に大事だと言った3つのものがあります。それは「ロゴス」という論理・理屈、「パトス」という感情や情緒、「エトス」という倫理です。僕の考えでは、ロゴスとパトスはいずれも頭に関係がある。ロゴスは左脳、パトスは右脳。エトスというのは心なんですよ。これに加えて、人間には肉体があります。
人間が、ああ疲れたな、もう嫌になっちゃう、やる気がしないなと言うとき、頭、心、身体のどれかが疲れているんだと思うわけです。左脳の理屈上のことで疲れているのか、右脳の感情、感覚的なことで疲れているのか。心のなかの倫理観で、自分が悪いことをやってしまったとか、いいことをやったとかで悩んで疲れるのか。一方、体の疲れは科学的なもので、酸素を代謝する過程で生じる「活性酸素」がオーバーワークなどで大量に発生すると、疲労の症状になるとわかっています。
藤井さんもそうですが、野球のイチロー選手にしても、「自分の好きなことをやっていたら、疲れを感じない」と言います。
藤井 はい。
難しい詰将棋は対局よりも「脳が疲れる」
丹羽 でも将棋に夢中で気付いていないだけで、どれかは疲れているんじゃないかと思うんです。将棋を指していて、どれがいちばん疲れると思いますか?