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「最年少、最年少、最年少…」19歳藤井聡太三冠の記録ラッシュ それでも難易度が高い中原誠の“伝説的記録”「当時はスゴいと思わなかった」
posted2021/09/19 17:03
text by
相崎修司Shuji Sagasaki
photograph by
KYODO
「史上最年少」という見出しがこれほどまでに躍った時代というのは、これまでにあったのだろうか。9月13日に行われた叡王戦で藤井聡太二冠(王位・棋聖)が豊島将之叡王を破り、叡王のタイトルを奪取。19歳1カ月での三冠達成は1993年1月に22歳3カ月で達成した羽生善治九段の年齢を大幅に更新する最年少記録である。
振り返れば、2016年に14歳2カ月という史上最年少でプロ棋士デビューを果たしてから、藤井には常にその言葉がついて回っていた。藤井以前の史上最年少棋士は1954年に14歳7カ月で四段へ昇段した加藤一二三九段だが、当時はそれほど注目を集めていなかったと加藤は回顧している。
将棋界で「史上最年少」という形容詞が使われたのは2人の若き名人が誕生した時だろう。中原誠十六世名人が1972年に初めて名人を奪取した時は24歳9カ月で、当時としては群を抜いて若い名人だった。そして1983年、谷川浩司九段が当時21歳2カ月で名人奪取を果たした最年少記録は現在に至るまで更新されていない。
藤井には当然、こちらの更新も期待されているが、史上最年少名人は、藤井にとっても容易な道ではない。将棋界における各部門の主な最年少記録と、藤井がそれを実現できるかどうかという可能性について考えてみたい。
“五段昇段だけ”加藤一二三九段が早かった
まず、藤井がこれまでに達成した主な史上最年少記録を振り返ってみよう。
◎最年少四段昇段、六~九段昇段
藤井が最高段位である九段に昇段したのは2021年7月3日、18歳11カ月。自身が持っていた棋聖位を防衛することで、タイトル通算3期の規定を満たし、九段昇段を果たした。それ以前の段位で五段昇段だけは最年少ではない。こちらは加藤一二三九段の15歳3カ月で、当時と現在は時代背景が異なるため同列に比較はできないが、藤井が更新できなかった数少ない年少記録である。
◎初勝利、14歳5カ月
現在のプロ棋士のデビューは三段リーグを抜けた直後の4月1日あるいは10月1日付となっているが、その日当日に対局を行うようなことはまずない。藤井のデビューは2016年10月1日だが、実際に初の公式戦へ臨んだのは同年の12月24日である。加藤一二三九段に勝ち、白星スタート。そこから29連勝の大記録を達成したのは言わずもがなであろう。
もう一つ付け加えると、藤井の初敗戦は連勝の止まった2017年の7月2日で、当時14歳11カ月だが、これは最年少ではない。加藤がデビュー2戦目、14歳8カ月のときに敗れているからである。