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「真新しい問題ではない」日本人アスリートの〈性的画像問題〉を米国女性写真家に伝えると…世界的フォトエージェンシーの取り組みとは? 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byGetty Images

posted2021/09/12 11:02

「真新しい問題ではない」日本人アスリートの〈性的画像問題〉を米国女性写真家に伝えると…世界的フォトエージェンシーの取り組みとは?<Number Web> photograph by Getty Images

東京五輪フェンシング男子エペ団体で優勝した瞬間の日本チーム。Getty Imagesの女性カメラマン、エルザ・ガリソン氏が撮影

 そこでゲッティは女性カメラマンの採用を増やした。女性の具体的な人数や男女比率については回答を得られなかったが、女性を増やしたことで起きた変化については、このように語った。

「さまざまな視点を持ったカメラマンを雇用することは、報道写真を様々な角度から切り取るという意味で非常に重要です。それに、女性を採用することで女性ならではの視点が増えるだけでなく、経験豊富なカメラマンが指導者となって、彼女たちを飛躍させるという相乗効果も生まれました」

 昨今大きく問題になっている女性アスリートの性的な切り取り方についての対応策については、「アスリートの競技や結果に焦点を当てた写真を撮影し、選択するように指示しています」という回答。結局のところ、撮影する側や選ぶ側のモラルや考え方にゆだねられるというところに行きつくが、だからこそ、女性を増やすことが問題解決の糸口となりえる。

 マイナルディス氏は「東京五輪は、過去最高に環境が整ったオリンピックでした。最新のテクノロジーと環境で、撮影からサイトに写真があがるまでの配信スピードを、2016年リオデジャネイロ五輪の時の59秒から30秒以内に縮めることができました」と技術の進歩にも言及した。

「スポーツの物語は男性の声とレンズを通して語られてきた」

 ゲッティの専属カメラマンとして東京五輪でフェンシング、女子サッカー、ビーチバレーなどを取材したエルザ・ガリソン氏は、米国ミネソタ州出身。ミズーリ大学ジャーナリズム学部を卒業した1996年に「Allsport」(1998年にGetty Images社が買収)に入社し、暗室作業など写真部の業務をこなしながらロサンゼルス周辺のプロスポーツやカレッジスポーツの取材をしてきた。その後、ニューヨークオフィスへ異動。現在もニューヨークで勤務している。

 ガリソン氏に、日本ではここ数年で女性アスリートの性的写真の問題が増えていると伝えると、「これは残念ながら、真新しいことではありません」との言葉が返ってきた。

「私が記憶している限り、女性アスリートは以前から性的に扱われてきましたが、メディアや社会が、女性が性の対象になることに対して問題提起をし始めたのは、ここ数年のことです」

 女性から声が上がらなかったのは、業界全体を通じて女性の数が少なかったからだと指摘する。

「ほとんどの場合、スポーツの物語は男性の声とレンズを通して語られてきました。スポーツ業界で多くの女性が働くようになるまで、女性のセクシュアル化は問題視されていなかったのです」

【次ページ】 カメラマンの視点や人生経験が撮影に反映される

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