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「真新しい問題ではない」日本人アスリートの〈性的画像問題〉を米国女性写真家に伝えると…世界的フォトエージェンシーの取り組みとは?
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byGetty Images
posted2021/09/12 11:02
東京五輪フェンシング男子エペ団体で優勝した瞬間の日本チーム。Getty Imagesの女性カメラマン、エルザ・ガリソン氏が撮影
機運変化の節目にある今、ガリソン氏が訴えるのは、女性がリーダーシップを発揮することの重要性だ。
「スポーツ界で働く女性が増えれば増えるほど、業界は変わっていくでしょう。初期の頃は、このような問題について発言すると報復されるのではないかという不安があり、多くの女性は好きな仕事を続けるために沈黙していました」
カメラマンの視点や人生経験が撮影に反映される
一方で、写真を撮ることについての根本的な思いは誰とも共通しているという。
「私は女性でもありますが、スポーツカメラマンとして、試合のストーリーを伝えたいというすべてのカメラマンと同じ気持ちで撮影しています。カメラマンとしての私の仕事は、ファンやライター、コメンテーターが何年も語り継いでくれる決定的な瞬間を捉えることです。私のスポーツカメラマンとしての使命は、選手の肉体的な能力、動き、感情、そしてスポーツの美しさを捉え、世界中の視聴者に届けることです。スポーツの歴史に残るような瞬間を捉えたということが何よりの喜びです」
そのうえで、撮影する際には、個々人の考えが尊重されるべきであるとも強調する。
「カメラマンには、それぞれの視点や人生経験があり、それが撮影に反映されます。だからこそ、オリンピックのような世界的なイベントでは、多様な視点を持つことが重要です」
また、女子スポーツの撮影時には特段の注意を払うことも忘れない。
「女子スポーツは男子に比べて資金も少なく、報道される数も少ない。さらには、給与や練習環境の面でも平等とは言えません。昔に比べると改善されていますが、同じ女性として、女性アスリートを撮影する際には、単なる競技ではなく、彼女たちのストーリーをいかに伝えられるかを考え、女性アスリートの能力や感情が爆発した瞬間を捉えることを意識しています」
ガリソン氏が言うように、スポーツの現場に女性カメラマンが増えていくことにより、おのずと女性アスリートの競技者としての魅力がフォーカスされていくのではないだろうか。ゲッティが持つ問題意識と解決へ向けた取り組みは、継続することによって成果が出てくる性質のもの。リーディングカンパニーとして女性比率向上に使命感を持って取り組んでくれればと願う。