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「智弁vs智弁の決勝」は和歌山が勝ったけど… 両校の対戦成績、岡本和真に西川遥輝らプロが多いのは?〈高嶋仁名誉監督の偉大さ〉 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byHideki Sugiyama

posted2021/08/30 17:02

「智弁vs智弁の決勝」は和歌山が勝ったけど… 両校の対戦成績、岡本和真に西川遥輝らプロが多いのは?〈高嶋仁名誉監督の偉大さ〉<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

ユニフォームの酷似ぶりが話題となった智弁和歌山と智弁学園の決勝戦は、スコア以上に白熱した闘いだった

 立田はこの試合で150球以上投げて、10点以上奪われて敗退した。試合後、立田は捕手の向谷拓巳(のち楽天)と泣きながらキャッチボールをしていたが、筆者はこの試合で「投手1人だけで“球数制限”をするのは不可能だ」ということを実感した。

 それと同時に、好投手・立田の野望を平然と打ち砕いた岡本のスケールの大きさにも感心した。なおこの試合では、今、岡本のチームメイトになっている1学年下の廣岡大志も出場している。

両校の選手、指導者の人脈に連なる高嶋名誉監督

 両校が強豪校として不動の地位を築いた背景には、1人の野球人の存在がある。

 甲子園最多勝を誇る高嶋仁だ。

 両校で監督を務め、智弁学園(1972年~78年)で春5勝2敗、夏2勝1敗、智弁和歌山(1980年~2018年)で春25勝11敗(優勝1回)、夏36勝21敗(優勝2回)、甲子園通算では68勝35敗(優勝3回)という数字を残した。

 高嶋仁は両校の名誉監督になっている。智弁学園、智弁和歌山の選手、指導者の多くは高嶋仁の人脈に連なっている。

過去にも系列校が対戦するケースはあったが

 なお甲子園で系列校が対戦するケースは過去にもあった。

 今年の選抜でも1回戦で東海大相模と東海大甲府が対戦。相模が3-1で甲府を下している。また、1972年春の選抜では、ともに東京都の日大桜丘と日大三が決勝戦であたり、5-0で桜丘が勝って初優勝を飾っている。

 ただ、智弁学園と智弁和歌山はユニフォームがほぼ同じ、何より礎を作った指導者も同じ。大学系列校を「企業の支店同士」とするならば智弁と智弁和歌山は「血を分けた兄弟同士」くらいの近さではないかと思う。

 これは全国的な傾向だが、甲子園では公立校は出場することも、勝つことも難しくなっている。そんな中で、優秀な選手を集めることができ、練習環境も整っている私学が圧倒的に有利になってきている。

 奈良県では智弁学園と天理、さらには奈良大附と私学が春、夏、秋の県大会では毎年、上位を独占している。和歌山県では市立和歌山が健闘しているが、2017年夏以降は智弁和歌山が圧倒的になっている。

 そういう状況を考えれば智弁学園と智弁和歌山の「兄弟対決」は、今後も見られる可能性は高いだろう。それも興味深いが、筆者は同時に、公立校など多様な学校が甲子園に進出してほしいとも願っている。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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