Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「新宿」でなぜサッカーを? 異例の百年構想クラブ認定、元Jリーガー続々加入も「チームは今、過渡期にあるんです」
posted2021/08/26 11:01
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Criacao Shinjuku
タクシーの中で目覚めると、そこはネオン輝く新宿の街だった――。
そんなシーンで始まる『ロスト・イン・トランスレーション』は、西新宿にそびえるパークハイアット東京を舞台にした映画である。
ビル・マーレイ演じる老いたハリウッドスターと、スカーレット・ヨハンソン演じる若い人妻、孤独なふたりの出会いと別れを描いた物語だ。
「“雰囲気映画”なんですけど、新宿の街の魅力を捉えていて僕は好きです。『ブレードランナー』とか、『エヴァ(ンゲリオン)』とか、ああいう世界観が好きだから、もともと新宿に興味があったんです。(出身の)大阪ってそれだけで完結した街なので、長渕剛みたいに上京して、っていうマインドを持った人はあまりいないんですけど、僕は社会人になるなら東京で就職しようと思っていたし、新宿に住みたいなって思っていましたから」
関西学院大を卒業し、徳島ヴォルティス(当時J2)で3年間のプロ生活を送った井筒陸也は、自らJリーガーを辞めて新宿にやってきた。
新宿御苑近くの株式会社Criacaoで社会人として働きながら、クリアソン新宿でプレーするようになったのは、約束された未来だったのかもしれない。
実際に住んでみて、街の奥深さに触れている。
「新宿って、西口にめちゃくちゃ大きなビル群があったり、東口にはゴールデン街があったり。風俗ビルの目の前に交番があったりもするし、雑多でカオスなところも面白い。ぶらぶら散歩するんですけど、萌えポイントはたくさんあります」
1日の乗降客数が世界一と言われる新宿駅を中心に、西を見れば都庁と西新宿のオフィス街、東を見れば歌舞伎町や新宿三丁目の繁華街が広がっている。
さらに新宿区全体に目を転じれば、四谷や高田馬場はにぎやかな学生街として栄え、神楽坂にはしっとりとした花街の風情が残り、新大久保はコリアンタウンとして、新宿二丁目はLGBTタウンとして知られている。
多様性にあふれる新宿区は、住民の10%以上が外国人という多文化共生の土地でもあり、行政には国籍やジェンダーといった障壁を取り除き、ダイバーシティをつなぎ合わせる役割が求められる。
こうした行政の抱える課題に、スポーツの力を使ってどうアプローチし、どう解決していくか――。
それこそが、スポーツ事業を展開し、サッカークラブを運営するクリアソンの存在意義だ。