Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「新宿」でなぜサッカーを? 異例の百年構想クラブ認定、元Jリーガー続々加入も「チームは今、過渡期にあるんです」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byCriacao Shinjuku
posted2021/08/26 11:01
クリアソン新宿の2021キービジュアル。ゴールデン街の協力のもと、ユニフォーム姿で写真におさまった
関東サッカーリーグ1部(J1から数えてJ5に相当)で戦うクリアソン新宿がJリーグの舞台、つまりJ3に昇格するためには、日本で最も過酷な大会と言われる全国地域サッカーチャンピオンズリーグを勝ち抜いてJFLに昇格し、JFLでも上位に入らなければならない。
8月21日にジョイフル本田つくばを2-0で下し、後期5節終了時点で暫定2位に浮上したとはいえ、はるかに遠い道のりだ。
しかし、百年構想クラブに認定されたことで、夢に一歩近づいたのは間違いない。
これまでサッカーを続けてくるなかで、井筒はチーム戦術に関しても、自身の技術を極めることについても、そこまで興味を持てなかったという。
「サッカーのやり方に対して、決定的に興味がないんですよね。この監督は自分に何を求めているのか、ということには気づけるので、自分が試合に出るために必要だからやっていただけで。
同じように、1mmレベルまでこだわって、正確なパスを出せるかどうか、みたいなプロフェッショナリズムも、自分には苦痛なところがあって。そこでパスが通ったとか、通らなかったとか、だからなんなんだ、みたいな気持ちもあったんです(苦笑)」
だが、株式会社Criacaoで働き始め、クリアソン新宿でプレーするようになって、そうした細かい部分にこだわるのも悪くないと思うようになった。
「パスが通って、ゴールが決まって、試合に勝つと、誰かが喜んで、その街が盛り上がって、新宿がひとつになる。そんな兆しが少しでも感じられると、パスを通したいなって思える。だから今、この先に大きな物語があるなら、パスにこだわってもいいかなって思えるんですよね」
天邪鬼ですよね――。
そう言って、井筒は笑った。
だが、それは性格ではなく価値観の問題だろう。井筒にとって価値の見出せる物語の舞台が、新宿という街、そしてクリアソン新宿というクラブだったのだ。
井筒陸也が見る夢の先を共有したいなら、コロナ禍が明けたとき、ぜひ試合会場に足を運んでみてほしい。
そして、そう遠くない未来、新宿の街を訪れたあなたは、サッカーと地域の新しい関り方を目にするに違いない。
【前回を読む】前編「Jリーガーを辞めてJリーグを目指す“矛盾”」(NumberWeb以外をご覧の方は下段、関連コラムよりご覧ください)
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。