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“戦略家”馬淵史郎65歳の独壇場「盗塁サインを出すぞ」「マシンを“50cm”高くして」明徳義塾はこうして風間球打に139球投げさせた

posted2021/08/23 11:02

 
“戦略家”馬淵史郎65歳の独壇場「盗塁サインを出すぞ」「マシンを“50cm”高くして」明徳義塾はこうして風間球打に139球投げさせた<Number Web> photograph by KYODO

8-2で明桜(秋田)を破った明徳義塾(高知)。写真は9回オモテ明徳義塾、4番加藤の適時二塁打のシーン

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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KYODO

 戦略家・馬淵史郎の独壇場だった。

 明徳義塾が大会ナンバーワン投手の明桜・風間球打を攻略、3回戦進出を決めた。

 明徳義塾が風間から奪った得点は6回で2点のみだったが、投げさせた球数は139球。ボールに食らいついていく執拗な粘り作戦で風間を術中にはめ、2番手以降の投手を打ち崩しての快勝(8ー2)だった。

「ウチが先にビッグイニングを取られると試合にならない。風間くんに1球でも多く投げさせて中盤以降も競った試合になっていたらウチのペースと思っていました。スクイズがアウトになったり、ポイントポイントでラッキーなことがあった」

 馬淵監督はそう振り返っている。

「初球を振らない」

 プレイボールから明徳義塾の狙いは明確だった。まず、初球を振らない。4人の打者が1回表の打席に立ったが、初球スイング率は0%。風間が初回に投じた球数は25球。(四球で出たランナーの盗塁失敗で)3人でアウトにしたのにだ。一方の明徳義塾の先発・代木大和が初回に投じたのが8球だったから、その違いは明らかだろう。

 もっとも甲子園では、待球作戦や相手投手に球数を投げさせる攻略法はそれほど珍しくはない。明徳義塾にしても、過去に何度かやったことがある。

 この日(21日)の明徳義塾の風間攻略法が見事だったのは、ただの待球作戦ではなかったところだ。

 馬淵監督が続けてこう解説する。

「待球作戦でいくと相手にすいすいとストライクを取られてしまうこともある。だから、甘い球は積極的に打っていこうと。しっかりボールを見極めて、2ストライクに追い込まれてから、食らいついていけと。(9番の)岩城龍ノ介がよう粘った。ヒット以上の活躍。それが後々響いたのかなと思います」

 岩城は風間との2打席の対戦で17球も投げさせているから、馬淵監督が絶賛するのも頷ける。

「盗塁のサインを出すぞ」

 そして風間攻略のもう一つのポイントになったのは、1回表に明徳義塾が仕掛けた盗塁だ。失敗に終わるのだが、これも馬淵監督が仕掛けた罠だった。その盗塁死となった森松幸亮が説明する。

【次ページ】 「盗塁のサインを出すぞ」

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