甲子園の風BACK NUMBER
〈次戦は大阪桐蔭〉投手への未練を捨てて… 小学校の頃は捕手だった後輩の球を受ける立場になった“近江の要”のアツい物語
posted2021/08/22 17:03
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Getty Images/Kyodo News/JMPA
2人の距離は同じだった。1人はマウンドに立つ。もう1人はホームベースの後ろに座る。ただ、役割は6年前と入れ替わっていた。
5回まで進んだ前日の試合が、雨でノーゲームとなった20日の近江と日大東北の一戦。近江・山田陽翔は再び先発を務めた。
「小学校でバッテリーを組んでいたので、違和感はないです。『思い切り投げてこい』というジェスチャーをしてくれる頼もしい先輩です」
マウンドの先には、1年先輩の島滝悠真がマスクをかぶっていた。
小学校でもバッテリーを組んでいた山田と島滝。当時、マウンドに上がっていたのは島滝だった。
1年生の時には投手でベンチ入りしたが
そのまま近江でも投手を続け、1年生だった2年前には投手として甲子園でベンチ入りしている。ところが、新チームになって、多賀章仁監督から捕手転向の打診を受けた。投手での限界は感じていなかった。未練がなかったわけではない
「監督の気持ちが伝わってきたので、自分がやるしかないと思いました」
扇の要を務める覚悟を決めた。
島滝はワンバウンドを捕球する練習を繰り返し、リードを勉強した。同じ18.44mの距離でのプレー。見える景色が真逆になると、新しく覚えることばかりだった。それでも、「島滝なら必ずいい捕手になる」と信じた多賀監督が間違っていなかったことを証明するように成長し、捕手として甲子園に帰ってきた。
「背番号2で甲子園に戻ってこられたのは大きいと思います。2人の投手をしっかりリードして、ゲームをつくることができました」
日大東北との“再戦”は投手の経験が詰まっていた。