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NBAファイナル進出に貢献した日本人コーチは、どんなキャリアを?「変わり続けないと乗り遅れますから」
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byPhoenix Suns Social Media
posted2021/08/12 11:01
ミケル・ブリッジズと肩を組む玉川康平さん。2019-20シーズンからサンズに参画し、28年ぶりのNBAファイナル進出に貢献した
結局、サンズは前シーズンから大躍進し、ウェスタン・カンファレンス2位の成績でプレイオフに進出。プレイオフでは、選手の怪我や、新型コロナウイルス感染などのハプニングもあったが、そのたびに乗り越え、NBAファイナルまで勝ち進んだ。1試合の勝敗がシリーズを左右するプレイオフでは、玉川たちヘルス&パフォーマンスのスタッフにも大きなプレッシャーがかかる。
「プレイオフはレギュラーシーズンとはまったく違うシーズンというとらえ方をしていました。レギュラーシーズンでは(1試合あたり)35分、36分出ていた選手が、プレイオフでは42~43分出たりするなかで、常に選手をアベイラブルな(試合に出られる)状態にする。そのためにリカバリーのことなど、ヘルス&パフォーマンスのチームで話し合うことがさらに多くなりました。
ただチームはすごくまとまっていたので、乱れることはなかったですね。自分でコントロールできることに集中するというのは、常に頭においています。僕も初めてのプレイオフの経験だし、ほとんどの選手にとってファイナルに行くのは初めての経験でしたから。
チームの雰囲気は、フランチャイズプレイヤー(エース)から15、16番の選手まで、思ったことをきちんと伝えられる環境で、そういうチームの雰囲気と、ベテランのリーダーシップが大きかった。言いづらいことでも言わなきゃいけないこともあるけれど、それを言える環境だったのは、チームのまとまりのおかげでした」
変わり続けないと乗り遅れる
NBAファイナルではミルウォーキー・バックスに、最初の2戦に勝ちながら、その後4連敗。2勝4敗で敗れ、優勝という目標は目の前で達成できずに終わった。ホームでの第5戦に敗れて王手をかけられた後は、コーチも選手たちも「次に勝って、またホームに戻ってくる」を合言葉にしていたが、それも成し遂げられなかった。
「ファイナルで負けたのは辛かったですね。スタッフとしても辛かったです。選手やコーチ、フロントオフィス、ファンも含めて、どれだけ辛いかは言葉で表せない。フェニックスに戻る飛行機のなかは、僕自身もそうだったんですけれど、チームの雰囲気としても、何が起こったかを受け入れられないっていう雰囲気でした。飛行機のなかで、『あぁ、負けたんだ』って思っていました」
それでも、前シーズンにはプレイオフにも出られなかったチームが、NBAファイナルまで勝ち進んだことはまぎれもない事実で、チームとしても自信になる。
それは、選手だけでなく、スタッフも同じだ。
「シーズンを通してずっと信じてやり続けてきたこと、たとえばトリートメント、トレーニング、サプリメント、あとは体調コンディショニングの関係といったことが形になった。これが先に向けてのファンデーション(土台)になる。まだまだやらなきゃいけないことがあるっていうのは、ファイナルを通してわかったんですけれど、まずひとつは形になった。シーズンの運び方など、ヘルス&パフォーマンスのスタッフなりにこうしたらいいということがわかったのは、やっぱり自信になりました。何といっても結果がすべての世界なので。もちろん、勝ったからそのまま同じことを来シーズンするわけではなく、来年はもっとよくできることがある。変わり続けないと乗り遅れますから」
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