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NBAファイナル進出に貢献した日本人コーチは、どんなキャリアを?「変わり続けないと乗り遅れますから」
posted2021/08/12 11:01
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
Phoenix Suns Social Media
今年、28年ぶりにNBAファイナルに進出したフェニックス・サンズに、ひとりの日本人のスタッフがいる。スポーツサイエンティスト兼アシスタント・ストレングスコーチの玉川康平。19-20シーズンからサンズで働き始めた。
その玉川のもとに、去年11月下旬、1本のテキストメッセージが届いた。時間は夜中の3時。サンズのヘルス&パフォーマンス部門のスタッフのグループチャットに届けられたものだった。
送り主の名前を見ると、モンティ・ウィリアムズとある。サンズのヘッドコーチだ。ウィリアムズHCがこのグループチャットに投稿してくることは珍しい。何かと思って見ると、そこには、新シーズンに向けてのチームの目標が優勝であること、ウィリアムズHCがそう考えるにいたった理由が書かれていた。20―21シーズンのトレーニングキャンプが始まる数日前だった。
その時点のサンズは、優勝候補どころか、10年連続でプレイオフを逃してきたチームだった。傍から見たら突拍子もない目標に聞こえたかもしれない。
しかし、前のシーズン、コロナ禍で中断した後、再開後シーズンの試合は8戦全勝をあげ、プレイオフ出場まであと一歩まで迫る勢いがあった。チームのケミストリーも高まっていた。さらに、オフシーズンにはクリス・ポール、ジェイ・クラウダーといった経験豊かなベテランが入り、若手選手が多いチームに芯ができた。チーム全体に自信が満ち溢れてきたところに届いたヘッドコーチからのメッセージだった。
ヘッドコーチ自ら「優勝」という目標を、コーチ陣や選手たちだけでなく、共に働くスタッフ全員に自分の言葉で伝えたことで、チーム全員がひとつにまとまり、同じ方向を向いた。
「ヘッドコーチ、フロントオフィスのリーダーシップのおかげですね」と、玉川は振り返る。「そういうコミュニケーションを頻繁に取るコーチなんです」