酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
東海大相模や星稜が出場辞退…高校野球関係者に聞いた感染症対策の難しさ「指導者自身も“鼻出しマスク”で」「更衣室だと気が緩み…」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKatsuro Okazawa/AFLO
posted2021/08/09 11:04
2021年センバツ決勝前。2年ぶりの夏の甲子園もぜひ無事に開催されてほしい
「更衣室を出てグラウンドに降りてくるまでは必ずマスクを着用するように指導している」
「マスクをしての移動を徹底し、先発選手以外はマスクをする」
と言う指導者がいる一方で、「7月に入り気温が上がると、今度は熱中症リスクが高まったので、練習中は外してよい」「熱中症もあるので、マスク着用は任意」とした指導者もいる。
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ただし、それでも人が集まるときはマスク着用、人と話す時もマスク着用とし「常にマスクはユニフォームのポケットに入っている状態だ」という指導者もいた。
着替えをロッカールームではなく屋外で行っている学校も多い。その際には「会話禁止」だ。ただし、おしゃべりについては、筆者が見るところ、なかなか守られていない学校も多い。
給水機、ロジンバッグの共用禁止まで
指導者が神経を使っているのはジャグやポット(設置型給水機)や、スクイズボトルなど口をつけるものだ。当然、共用を禁止している。学校によっては選手が自分で水分を持参するように指導している学校もある。
また試合の際にはロジンバッグを相手チームと共用しない、試合相手の学校からのお茶や弁当の差し入れなどを廃止する申し合わせをした学校も多い。
最近では、甲子園でも相手校の選手や審判に水やスポーツドリンクを支給することが「美談」として語られることが多いが、今回に限りそれは禁止にすべきだろう。
さらに「体調が悪い時は必ず休むこと」「家族に体調不良者がいた場合は念のため休むように」など生活指導面の注意を行う指導者もいた。なお練習や試合時には検温をこまめにしている学校は多いが、PCR検査はほとんど実施していない。
関東圏の公立高校の指導者は「学校全体の感染対策意識も高く、6月まで本校は1人も出ていないが、夏休みに入ってから出始めている」と懸念を語った。審判員は「更衣室では(試合前よりも)試合後だと気が緩みルーズになっている印象だ」と語る。これも留意すべきポイントだ。
関東圏の有力私学の監督は選手たちに、このように語っているという。
「社会の一員として感染拡大防止に努めよう」
「手洗い、マスク、人との距離など、できることを徹底するのは野球と一緒」
「最大限の感染対策をしても感染するかもしれないが、それをしていないと大きな後悔をする」
地域や学校によって方法はまちまちという事実
具体的な感染症対策に加えて選手に「心構え」を説くことも重要だろう。
関西の公立校の野球部長で、校内の保健主事、コロナ対策を司る分掌の長を務める指導者は「とにかく感染リスクはすぐそばにあると考え、他人事のように捉えず主体的に感染対策を行うこと」と語る。
こうした声からは、感染防止のために指導者が苦労をしていることが分かる。ただ、地域や学校によってその方法はまちまちだということだ。