酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
東海大相模や星稜が出場辞退…高校野球関係者に聞いた感染症対策の難しさ「指導者自身も“鼻出しマスク”で」「更衣室だと気が緩み…」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKatsuro Okazawa/AFLO
posted2021/08/09 11:04
2021年センバツ決勝前。2年ぶりの夏の甲子園もぜひ無事に開催されてほしい
10数校の指導者などに話を聞いてみると……
全国十数校の高校野球指導者と審判、高野連関係者にオンラインを通じて話を聞いた。どの学校も地方大会で敗退している。問題の性格上、校名や個人名については公表しない。
まず聞いたのは「周辺でクラスターや感染者の話が出ているか?」である。
驚くべきことにほぼ半数の学校の指導者が、自分の学校や野球部で陽性者が出たと答えている。
ADVERTISEMENT
関東の有力私学では3学年で100人超の部員がいる中で、5月から7月に5人の陽性者が出たという。感染ルートは家庭内感染、経路不明で、他の部員は濃厚接触者になっていないが、それでも短期的な練習中止を余儀なくされた。
また関西の公立高校では部員1人が陽性者となったことで、野球部だけでなく当該学年全員が濃厚接触者となり、野球部は春季大会への出場を辞退したという。
筆者も取材をする中で練習試合当日になって「部員と同じクラスの生徒が陽性になったので、中止になった」といった話をいくつか聞いた。
多くの指導者にとっては「感染拡大」は身近な脅威であり、毎日を戦々恐々としながら部活指導を行っていたことが分かる。
公立校の方がクラスターが発生しにくい?
ただし、ある関東地区の公立校の指導者からはこのような証言があった。
「有力私学の指導者の中には、自分自身も“鼻出しマスク”で、選手同士が密になっていても、全く注意しない人もいた。その学校は寮生活だが、クラスターが発生してもおかしくないのでは」
北陸地方の審判員はこのようにも話している。
「公立校の場合、都道府県や市町村から多くの縛り(手指消毒や黙食の徹底)があるので、クラスターが発生しにくいのではないか」
つまり私学と公立では状況がやや異なるという指摘だ。
熱中症リスクとマスク着用の難しさ
では実際に――指導者たちはどんな感染症対策を実施しているのか?
感染症対策の基本は「マスク」だが、指導者の考え方は分かれている。