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《新体操》フェアリージャパンは五輪の大トリを飾れるか? カギは“金メダルも獲得した”ボールの正確さと美しさ
posted2021/08/07 06:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
KYODO
東京五輪で金メダルラッシュの大トリを飾ろうと心を一つに重ね合わせる乙女たちがいる。新体操日本代表『フェアリージャパン』だ。新体操の団体総合決勝が行なわれるのは大会最終日の8月8日。リオデジャネイロ五輪に続いて主将を任されている杉本早裕吏は、「メダルを獲得するというチームの目標のために、責任を持って踊りきりたい」と大いに意気込んでいる。
新体操団体はここ数年で右肩上がりに成績を伸ばしている優等生集団だ。2015年の世界選手権団体種目別リボンで40年ぶりの銅メダルを獲得したのを契機に、'17年には史上初めてメダル3個を獲得し、'18年も表彰台を確保した。'19年はとうとう種目別ボールで史上初の金メダルを手にし、五輪種目である団体総合でも銀メダルに輝いた。今では世界中から一目置かれる存在へと成長しているのだ。
「ボール」の技術は他の追随を許さない
強くなった理由は何か。10年以上続けてきたロシアでの長期合宿の成果が出ているのはもちろんだが、このところ追い風となっているのが技の難しさを示すDスコア重視のルール変更だ。
'18年にはDスコアの上限が撤廃され、各国とも高難度の技を多く組み込む演技構成へと変化。山崎浩子強化本部長によれば、2年前は「5秒に1個」だった技の数が今では「3秒に1個」に増えている。
そういった潮流の中で、巧みな手具(しゅぐ)操作を自慢とする日本の評価が上がったのは必然だった。とりわけ「ボール」の片手キャッチの技術は他の追随を許さない正確さで、日本の武器となっている。
そして、忘れてならないのが技術を鍛えるのと同時に表現力にも磨きをかけてきたこと。山崎本部長は「どんなに技を入れ込んでも美しさを失ってはいけない。日本は美しさが評価されている」と胸を張る。
メダル争いは激戦が予想される。山崎本部長は「ロシアが絶対ではないし、今まで下位だった国でも(国際大会で)優勝している。どの国もメダルが獲れる中、日本も予選から五分五分のところを綱渡りしながらいくと思う」と慎重だ。
「私たちの演技を見て『感動した』『開催してよかった』と言って頂けるように頑張りたい」と話すのは杉本。選手たちは最高の笑顔で締めくくることに心を集中させている。