全身スーツが話題に　ドイツの20代体操選手に聞く“性的画像問題”「自分が自分の体をどう感じるかという問題とは少し違う」

　今年4月、体操の欧州選手権でドイツの女子選手たちが着用した衣装が大きな話題となった。女子体操選手の衣装といえば、水着のような形のもの、もしくは水着の上半身だけが長袖になったレオタードを思い浮かべる。だが、この時ドイツのザラ・フォス、エリザベト・ザイツ、キム・ブイの3選手は長袖で、かつ足首まである衣装でプレしたのだった。「体操のセクシュアリゼーションに対抗するために」とドイツ体操連盟はその意図をツイートした。

　日本でも性的な意図を持ってスポーツ写真を撮ることが禁じられるなど状況改善への動きがあり、このところ関心の寄せられるテーマではある。ただこの女子体操選手の取り組みをニュースで見た時に、ドイツで暮らす筆者は驚いた。

ドイツでは上半身裸で日光浴をする男女も

　というのも、ドイツ人の若い女性は日本人に比べて肌の露出を厭わないように思っていたからだ。街ゆく人を見ても、特に夏場は日本ではあまり見かけないショートパンツや、キャミソール姿を多くみかける。それに、晴れた日に近所の公園に行けば、海辺でもないのに上半身裸で日光浴をしている男女もたくさんいる。もちろん肌の露出に対する感覚は、国や地域、宗教によって大きく違い、中東は日本などの東アジアよりも厳密だが、それらを良い悪いで評価することはできない。

　では、彼女たちはなぜ従来のレオタードではなく、“長袖長ズボン”を選んだのか。ドイツ国内の予選終了後、東京五輪切符を掴んだばかりのザラ・フォス、エリザベト・ザイツにオンラインで話を聞いた。

ドイツ国内の予選で東京五輪代表に内定したエリザベト・ザイツ選手（左）と、ザラ・フォス選手（中央）　©Getty Images

すべての写真を見る（6枚）

東京五輪が延期されて「とてもショックでした」

　まず東京五輪についてたずねた。1年間の延期、未だ渦巻く反対論……。イレギュラーすぎるこの状況をドイツ人選手たちはどう見ているのか。

　3度目の五輪出場となるザイツは1年間の延期がとても苦しいものだったと明かす。

「去年延期が決まった時は、とてもショックでした。2020年は自分にとって大きな1年になると思って準備をして楽しみにしていましたし、五輪後は休もうと思っていろいろ計画もたてていました。なので、五輪が延期になったことで自分にとっては何もない1年になってしまった感じでした。悲しくてモチベーションがなくなってしまいました」

【次ページ】　「開催されるだけでラッキーで幸せなこと」