オリンピックへの道BACK NUMBER
「クズ」「インチキ野郎」「日本から出ていけ」 “誹謗中傷”をぶつけられたアスリートへ「気にしないようにすればいい」という無責任さ
posted2021/08/01 17:01
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
東京五輪では、競技とはまた別のところで、スポーツの、いやスポーツにとどまらず社会全体にもかかわるテーマや課題が生まれた。
その1つに、SNSなどでの誹謗中傷の問題がある。これまでの大会にはなかったほど、ニュースとしても大きく伝えられている。
7月28日には、卓球の水谷隼が誹謗中傷の被害にあっていることをツイッターで発信した(現在削除済み)。
この日は、サーフィンの五十嵐カノアがツイッター上で寄せられた誹謗中傷に対して反論したことが報じられ、翌7月29日には個人総合決勝を終えた体操の村上茉愛が、試合後メディアの取材の中で誹謗中傷があったことなどを話した。
同じ7月29日には体操の橋本大輝がツイッターで誹謗中傷について触れた。これは採点を巡ってのものであったことから、国際体操連盟が、審査は公正であり正確であった旨の声明を出す事態となった。
これらはおそらくは一部に過ぎず、少なくないアスリートが、誹謗中傷にあたる被害を受けていると考えられる。
ベテラン選手とその家族へ「老害」と中傷が
今回の五輪に限らず、SNSの利用者が増えるにつれて、これはしばしば問題となってきた。例えば2018年、サッカーワールドカップの開幕前には、代表のベテラン選手に対して「ごみ」、「老害」などの言葉がぶつけられ、同様の中傷が家族などにも向けられたという。
これを引き起こす要因はそれぞれにある。橋本の場合のように、競技の採点に対する不満から選手本人に誹謗中傷の言葉を送りつけることもある。あるいは単純に、応援する選手が敗れた腹いせとして対戦相手に言葉を投げることもあるだろう。試合以外のさまざまな要素も原因となる。ただ「気に食わない」から、としか考えられないようなことに起因していることもある。
先のサッカーの場合は、日本国内の人々によるものがほとんどだったと思われるが、今回は国境を超えて声が寄せられている点も目立つ。誹謗中傷は世界的な問題でもあるのだ。
さらにはSNSだけではなく、ポータルサイトに掲載された記事のコメント欄もクローズアップされた。日本の記事に書き込まれたコメント内容の酷さを、海外でも複数のメディアが伝えている。