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「人生狂いました、いい意味で」母の心配も賛否両論も超えて…世羅りさと“同志”たちが突き進む女子プロ“デスマッチロード” 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2021/08/07 11:00

「人生狂いました、いい意味で」母の心配も賛否両論も超えて…世羅りさと“同志”たちが突き進む女子プロ“デスマッチロード”<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

6月27日のアイスリボン後楽園ホール大会にて実現した、世羅りさ(右)と山下りなによる「蛍光灯デスマッチ」。彼女たちが危険な試合に挑む理由とは

 勝った山下には、その場で鈴季すずが挑戦表明した。昨年夏、17歳で団体トップのシングル王座に就き、今年に入ってベルトを失うとデスマッチ/ハードコア路線へ。6.27後楽園大会では、セミファイナルで「ハードコア七番勝負」の最終戦を行なっている。相手は初戦と同じ宮本裕向。会見での宮本の発案で、この試合もデスマッチルールになった。

 流血の末に敗れたすずだが、毎回“いかに男子を倒すか”のアイディアを練り、オリジナルの凶器を持ち込むなど今後の可能性を感じさせた。何より、全身でハードコア/デスマッチを味わう貪欲さが見ていて気持ちよかった。

“若くて可愛い”からこそ流血戦が炎上?

 試合後のインタビュースペースで「メインの勝ったほうに挑戦します」と語ったすずは、メイン後のリングで山下に挑戦表明。山下にも異論はなかった。すずが出てこなければ、自分から指名するつもりだったという。

 男女関係なくデスマッチのトップに立ちたいとすずは言う。山下はそのために避けて通れない存在だ。それは山下にとっても同じ。アイスリボンでデスマッチを志向する選手がいるなら、闘っておく必要がある。世羅が作った“デスマッチロード”を先に進めていくのも王者の役目だ。

 今のすずは大変だと思う、と世羅は言った。すずはハードコア七番勝負の竹田誠志戦で初めての大流血。そのレポート記事がネットに載ると“炎上”した。

「若いし体も小さくて、可愛いですからね。だから“デスマッチで流血するなんて”という批判も浴びてしまう。レジェンドの女子選手が流血しても“そんなことやるもんじゃない”なんて誰も言わないじゃないですか。私や山下に対してもそうですよね。でも、すずは言われてしまう。そこはキャリアを積むしかないでしょうね。でも、このまますずがデスマッチファイターとして5年、10年と闘ったらどんな選手になるのか。予想もできないですよ。楽しみで仕方ないです」

 すずはデスマッチがやりたくて、世羅のいるアイスリボンに入門した。世羅のデスマッチを見て「女子プロレスでもデスマッチをやっていいんだ。私もやれるんだ」と思ったのだ。

 それを知って、世羅は「道を作らなくては」という気持ちになったそうだ。それまでは「自分がデスマッチをやりたいだけ。誰かのためにという感覚はありませんでした」。

 しかしすずが入ってきて、そうではなくなった。自分がやっていることは、他の人間のキャリア、人生の道筋にも関わってくる。自分がデスマッチをできればいいというだけではない。アイスリボンにデスマッチの道を作る必要が生まれた。その道筋=デスマッチロードができた試合で世羅は負け、勝った山下にすずが挑戦する。そうしてまた新たな歴史が紡がれる。

【次ページ】 同志がいるからできた“デスマッチロード”

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