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石川祐希がオリンピックで勝ちたかった本当の理由…世界を見て磨いた“フェイクセット”「子どもたちにバレーをもっと知ってほしい」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2021/08/04 17:03
キャプテンとして日本代表を引っ張った石川祐希。ブラジル相手に見せた華麗なプレーは多くの子どもたちの夢につながるはずだ
打つと見せかけ、空中で体勢とボールをコントロールする。派手なフィニッシュばかりが目立つが、実はフェイクセットは基本のパス力やボールコントロールの技術が備わっていなければできないプレーでもある。もともと石川はパス力があり、高校時代はチーム戦術でツーセッターに取り組んでいたこともあるほど、パスの質や精度の基本能力が高い。
加えて、石川がプレーするイタリアでは、かつてモデナのチームメイトであったイアルバン・ヌガペト(フランス代表)らがこのプレーを得意としており、多くの選手が当たり前にフェイクセットをこなしている。
Vリーグでもパナソニックのミハウ・クビアク(ポーランド代表・主将)がこのプレーを得意とし、その技術は世界随一とも言われている。石川は彼らの試合やプレー映像を見て、練習を繰り返し、自分の技にするべく磨いてきた。
上手な人を見て、真似る。石川はバレーボールを始めた頃からその能力に長けていた。
「祐希はめちゃくちゃ観察する」
星城高の同期で、2020年3月までジェイテクトでプレーし、セッターとしてVリーグ初優勝に貢献した中根聡太氏(現・星城高校バレー部監督)は語る。
「あの人うまいな、という選手がいたら、祐希はその人のプレーをめちゃくちゃ観察する。そこからコツをつかむのがうまいんです。バレーに限ったことじゃなく、バスケやテニスもそう。上手な人を見て、そのイメージを自分で当てはめてすぐやっちゃう。なかなかできることじゃないですよ」
もともと持ち得た、イメージを具現化する能力。そして世界最高峰でプレーするからこそ得られる、“お手本”と言うべき存在の数々。
コツコツ磨いてきた技を、東京五輪という舞台で、しかも世界王者ブラジルを相手に堂々とやってのけたのだ。