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石川祐希がオリンピックで勝ちたかった本当の理由…世界を見て磨いた“フェイクセット”「子どもたちにバレーをもっと知ってほしい」
posted2021/08/04 17:03
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Ryosuke Menju/JMPA
ブラジルのブロックに捕まる場面は、これまで数えきれないほど見た。
そのせいか、「これは幻か」と思わず画面を二度見した。
ブラジルのブロックがノーマークの中、日本の豪快なスパイクが決まる。しかも1度ならず、2度も。明らかに仕掛けにいった策が奏功した。
偶然ではなく、狙い通り。そんな最高の場面を演出したのは、どちらも石川祐希だった。
ブラジル相手に決めた2本のフェイクセット
1つめ。第1セットを失って迎えた第2セット。出だしからリードした日本は5-3と点差を2点に広げる。ここでセッター関田誠大がサーブを打ち、切り返したブラジルのスパイクを再び関田が拾う。
そのままボールはレフトの石川へ。第1セットの中盤にも同じようなシーンがあった。その時も関田が1本目をレシーブしてから、2本目を石川が豪快かつ鮮やかに打って決めている。当然、ブラジルのブロックはここでも石川が打つと判断し、レフトに走り、ブロックに跳んだ。
打つには十分可能な高さだった。だが石川は絶妙なタイミングで、逆サイドのライト側で攻撃準備に入っていた西田有志にトスを上げた。打つと見せかけ、セットする――いわゆる『フェイクセット』と言われるプレーが決まり、西田がブロックアウトで得点をもぎ取った。
2つめはもっと鮮やかだった。8-5と日本がリードした状況で、山内晶大がサーブに立った。フローターサーブで崩されたブラジルは、チャンスボールを返さざるを得なかったが、せめて次の攻撃を遅らせようとセッター関田を目掛けてボールを返した。
この状況で、今度はバックセンターから石川が助走をつけ、バックアタックの体勢に入る。「今度こそ打ってくる」とばかりにブラジルのブロックが中央で跳ぶと、石川は華麗なフェイクセットでまたもボールはライト側の西田へ。
1本目よりもさらに豪快なスパイクを決めた西田が雄たけびを上げると、それを演出した石川も拳を握り、吼えた。