球体とリズムBACK NUMBER
「J1でもJ2でも、私がやることは同じだ」モンテディオ山形を覚醒させたクラモフスキー監督 戦術以上にアツい“人心掌握と強度”
posted2021/08/05 11:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
J.LEAGUE
東京五輪による中断前のJ2で、驚異的な躍進を遂げたチームがある。休暇に入る直前には首位のジュビロ磐田を敵地で下し、クラブ最長タイ記録の6連勝を飾ったモンテディオ山形だ。
その背景には、クラブ史上初となるシーズン途中の指揮官交代があった。一昨季まで横浜F・マリノスのアシスタントコーチを務め、昨季に清水エスパルスで監督として独り立ちしたピーター・クラモフスキー監督(昨季終盤に解任)が、5月16日の愛媛FC戦から指揮を執り始めると、そこから3連勝。引き分けをひとつ挟んで前述の連勝タイ記録を達成すると、新監督の初采配時には17位だったチームが6位に浮上し、首位に勝ち点6差と迫っている。
この間、19得点4失点、クリーンシートは6。それ以前の13試合では3勝5分5敗、11得点14失点だ。これほど劇的な蘇生は、なかなか見られるものではない。
内容にも現れている「クラモフスキーの色」
内容にも、このオーストラリア人指揮官の色が如実に現れている。ハイテンポなポゼッションフットボールで畳みかけ、サイドバックは攻撃時にセントラルMF的に振る舞うこともある──いわゆる偽SBだ。特色のあるスタイルで、一気に上位戦線に躍り出た山形は、現在のJ2でもっとも注目を集めるチームのひとつといえる。
「すべては選手やスタッフ、クラブのおかげだ」と42歳の指導者は言う。「見事な結果が出ているのは、彼らの毎日のハードワークの賜物だよ。シーズンは中断しているが、今のスタンダードを維持するよう、日々を大事にしていきたい」
筆者はクラモフスキー監督と同い年ということもあり、横浜での取材を通じて懇意になり、清水の監督に就任した際には、彼の母国のメディア用に話を聞いたりもした。しかし昨季はパンデミックの影響もあり、新天地では苦戦を強いられ、シーズン終盤に更迭の憂き目に。だから今季の彼の活躍には、個人的にも喜びを覚えていた。これはモンテディオだけでなく、指揮官の復活劇でもあるのだ。