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「J1でもJ2でも、私がやることは同じだ」モンテディオ山形を覚醒させたクラモフスキー監督 戦術以上にアツい“人心掌握と強度”
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/08/05 11:00
山形の地で復活を遂げているクラモフスキー監督
日々の練習から強度が高く、結果にフォーカスしている
「(就任の知らせを聞いた時は)びっくりしたし、嬉しかったです」と今季から山形にローンで加入している22歳は率直に言う。
「清水で結果は出ていませんでしたけど、個人的には面白くなるだろうなと思っていました。実際、選手の成長を促しつつ、結果を出すことにフォーカスしている監督です。日々の練習から100%以上を求めるので、選手がすごく必死になりました。時間は短いですけど、強度が高く、対戦形式も多く、勝負にこだわってくれと。けっこうな熱量で指導してくれています」
確かにマリノス時代から練習を任されていたこの指導者は、ピッチ全体に響き渡る声で選手を鼓舞し、スピードとテンポを重視していた。「最初は正直、ゆっくりボールを回したいなと思う時もあったんですが、それをやり続けると、相手にも休む暇を与えないことに繋がる」と山田拓巳は、その効果を実感している。「しんどいんですけどね」と笑いながら。
そんな手法は、清水ではうまくいかなかったが、指揮官は「失敗からも多くを学んだ」上で、自らの哲学を信じ抜き、次に繋げた。
「J1でもJ2でも、私がやることは同じだ」とクラモフスキー監督は言う。「今回はシーズン途中の就任だったが、信念や原則、メソッドはなにひとつ変えていない。戦術、技術、フィジカル、メンタル、攻守、そのすべてを高めたい。もっともっとやっていきたい。誰も止められないくらいに」
混戦のJ2、おのずとマークも厳しくなるが
現在、J2の上位戦線では、首位京都サンガF.C.から8位V・ファーレン長崎まで、勝ち点8差の間でひしめいている。今季は4チームが降格となるため、下位チームも必死に食らいついてくるはずだ。そして新監督就任後に9勝1分と大躍進する山形には、自ずとマークが厳しくなるだろう。
「選手、チーム、そしてファンにとっても特別なシーズンにしたい。コンセプトの中で誰もが全力を尽くし、輝いて欲しい。一日一日、いや一瞬一瞬を大切にして、毎日、少しずつでも成長してもらいたい。そして、素晴らしいことを成し遂げたい」
最後に、答えはわかりきっていたが、「今後の目標とそれを達成するためには?」と訊いてみた。
「毎日ハードワークして、自分たちのフットボールを磨き続ける。そして最後にトロフィーを掲げる。それしかない」
こんな熱い指揮官が率いる山形に、いつも以上にアツい夏が訪れている。エキサイティングなモンテディオの冒険の行方が楽しみだ。
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