マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
夏の甲子園地方予選「今年は2年生ショートが逸材ズラリ」岩手、長野、岡山、兵庫で見つけた“4人の来季ドラフト候補”
posted2021/07/30 17:06
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
KYODO
毎年、高校野球の「夏」に痛く感じることがある。
この時期の高校球児たちの野球は、本当に上手い……それは、時として、大学生を飛び越して、社会人野球を見ているような錯覚すら覚えるほどだ。
たとえば3年生なら、ほんとのところ2年4カ月ほどなのだが、その短い時間に繰り返し、繰り返し、高級な漆器にうるしを何度も塗り重ねていくようにして、これでもか、これでもかと、おのれの体に刷り込んできた技術が、炎暑のグラウンドで披露される。
プレーというよりは、むしろ球児たちの「歴史」を見せてもらっているようだ。
特に、今の高校球児たちは、「コロナ」の中で高校野球を続けてきた世代だ。昨年は、春から夏にかけて部活動停止の時期が長く、今年も、地域によっては全体練習自粛の期間があったり、いくつもの不自由の中で高校野球を続けてきて、それでもいつもの夏となんら遜色ないほどの腕前を発揮するのだから、球児たちの「努力」には、頭が下がるばかりだ。
なかでも、今の高校2年生は入学とほぼ同時に「コロナ禍」が始まって、ここまで存分に高校野球と向き合ってこられなかった世代ではないだろうか。
それなのに、どうして……?
スタートの「岩手」から、長野、岡山、兵庫……と今年のドラフト候補を追いかけながら予選を巡るうちに、「あれっ!」と思ったことがあった。
「上手いなぁ」と思うショートが皆、2年生なのだ。単なる「偶然」に過ぎないのだろうが、毎年、夏の予選を見て回っていると、こうした「傾向」のようなものに出会うことがよくある。
【1】花巻東高・宮沢圭汰遊撃手(2年)
最初の1人は、前回のレポートの最後でも触れた花巻東高・宮沢圭汰遊撃手(170cm68kg・右投左打)だ。
シートノックから、目を奪われる。ノンパワーのように見えて、動きにいちいちスピードが乗っている。頭が激しく動くことがないから、併殺プレーの捕球→送球の流動性が高く、送球はほぼストライクスロー。ゴロの打球にグラブの面(手のひら)がしっかり正対して、上からかぶせる右手にスッとボールが吸収される。
2年生どころか、大学に進んでショートのレギュラーで何年もやっているOBが、夏休みで帰省していて、後輩たちに稽古をつけに来ている……まるでそんな雰囲気の安心して見ていられるフィールディングだ。